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「長谷川さん、これコピーしてみんなに配布してほしい。明日朝一番の会議で使う資料なんだけど」







「わかりました」






ー泉さんが着任して、1ヶ月。





あれから泉さんの歓迎会をしたり、仕事をこなしたりと自然と関わることが増えて、泉さんはみんなとすっかり打ち解けていた。





よく気にかけてくれたり、気さくに話しかけてくれる泉さんにみんな信頼を寄せていた。







「ごめんね。それが終わったらもう上がっていいから」







月末が近く今日は珍しく残業をした。





フロアにはまだ何人か残っていて、みんな疲労した顔でパソコンと格闘している。






「ありがとうございます」






泉さんから渡された数枚の資料をコピーして、小冊子を作る。




泉さんをちらっと見ると、相変わらずパソコンに向かっていて、悩んだ顔したり、大きく伸びていたり。





中々終わらない業務に大変だな、なんて思いつつ作った小冊子を配布した。








「泉さん、これ泉さんの分です」







「助かったよ、ありがとう」







最後に泉さんに手渡すと、泉さんは爽やかな笑顔を見せて、お疲れさま、と声をかけてくれた。







「すいません、ではお先に失礼します」







荷物をまとめて部署を出るとき、泉さんが最後にさんきゅうな!と笑って送り出してくれて、その笑顔に不覚にもちょっと可愛いな、なんて思ってしまった。



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