リスさんのテスト
山智 侑
1話
その日に向けて、リスさんは、それはそれは頑張っていました。
今まで、どうしても半分から上に行けず、いつもがっかりしていました。
この試験のために、休みも返上で机に張り付いていました。
そんな姿を見て、陰でひそひそと小ばかにする動物も多かったのですが、リスさんは最後まで、努力を続けたのです。
そして本番。
いつもより難問が多かったとの評判でしたが、リスさんは黙々と問題に当たりました。
そして、なんと、初めて一番を獲ったのです。
答案を返してもらった日の、あの顔は忘れられません。
休み時間になると、他の動物たちが、周りに集まってきました。
「よくがんばったじゃん」
「すごいね」
「神が降りてきたか?」
リスさんは、もとから潤んで見える瞳で皆を見ただけで、何も言いませんでした。
それは、喜んでいるというよりは、何かをぐっとかみ締めて、黙っているために染み出してきた泪のようにも見えました。
次の日、リスさんは来ませんでした。
その次の日も、来ませんでした。
「あんなに点数良かったのに、どうしたんだろう」
少し早めの冬ごもりに入ったということになりました。
まだまだ、秋はもう少し味わえたというのに。
でも、あの時のリスさん、きっと、何かが弾けてしまったんじゃないかしら。
もう、ここには来るもんか、と思ったんでしょう。
たぶん、そうなんでしょう。
リスさんのテスト 山智 侑 @YamachiYu
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