幕間4
S-14『叶と未那が喋るだけシリーズ2』
「そういや叶。お前、中間の結果はどうだったん?」
「え。何、急に? そろそろ期末だってのに今さらそんな」
「いや。そういやちゃんとは聞いてなかったなって。だいたい同じくらいだろ?」
「だろうけどね。まあ、家庭科の実技とかあれば話は別だろうけど?」
「おん? なんだコンニャロ。俺だって技術科の実技とかあればお前なんて敵じゃねえよ」
「うっさいな。工作なんてできなくても困らないんだよ」
「料理は得意なのにな、お前」
「やかまし」
「ていうか俺は料理だってまったくできないわけじゃないし。そう考えると総合では勝ってね俺?」
「総合って言うならほかの教科も入れろー。わたしが勝ってるのは別にもある」
「はあ? いや、お前にそんな一方的に負けてる教科そうそうないだろ……なんだよ」
「倫理」
「ブッ飛ばすぞ」
「ほらそういうとこだー」
「だいたい倫理観と倫理科は関係ないだろ。倫理感あるけど。あるけど」
「どうだかねー」
「あっそう。……んなこと言ったら俺だってお前に勝ってる教科もうひとつあるぞ」
「……言ってみなよ」
「道徳」
「ブッ飛ばす」
「うぉあ!? あっぶねえな、実行すんじゃねえよ!!」
「クッション投げつけられたくらいで大袈裟なこと言うなよ。もう慣れたでしょーに」
「お前に慣れさせられたんだよ……」
「うっさいな。……つかなんの話だっけ……?」
「え? あ、なんだっけ……ああそうそう、思い出した。中間だよ中間」
「ああ。……何、張り合おうって? 相変わらず負けず嫌いだね」
「お前にだけは言われたくない」
「なんだと」
「てか別にいいんだよ、嫌なら嫌で。そっか。なんだ……悪かったんだ?」
「――……は?」
「いや、なんかデカい口叩く割には消極的だし。見せたくないなら無理にとは言わないさ」
「よーし喧嘩売ってるな?」
「べっつにー?」
「……ふうん、なるほど。いいよいいよ、わかった。言ってやろうじゃん。あとで泣いても知らないからね」
「ちょろいよなあ、お前……」
「うっさいバカ。アンタの安い挑発に乗ってやってんのは、優しさ」
「はいはい」
「ムカつくなコイツ……」
「わーったよ。それより決着つけようじゃねえの」
「いいよ。教科ごとにいこうか。まずは英語。未那は何点だった?」
「英語か……英語は結構取れた自信があるぜ?」
「……ちっ」
「お前も自信あったから最初にしたろ」
「別に」
「したよな」
「したけど」
「してんじゃねえか」
「やかまし。点数言えよ」
「86点」
「……え?」
「だから86点だよ。言ったろ、かなりよかったって」
「……」
「おっとぉ? その反応は自信がある教科で負けた反応かな?」
「……」
「え……あのちょっと。何、もしかして俺、負けてる……?」
「……いや」
「なんだよその感じ……点数は?」
「……86点」
「……え?」
「だから同じだっつってんだよ」
「…………」
「…………」
「……ごめんちょっと一回待ってもらっていい?」
「おーけー。わたしも同じ気持ちだ。一回落ち着こうか」
「ありがとう」
「うん」
「じゃあ落ち着いたところで言いたいんだけど……ねえマジで?」
「マジだよ。なんなら答案見る?」
「いや、いい。疑ってない。ただ、こう……なんだろ。もうなんか、……なんだろうなこれ」
「わたしが知るかよ……」
「だって……ええ? ここまで被る? いくらなんでもそこまでしなくたっていいじゃないですか。でしょ?」
「こっちの台詞だって話なんだけど。なんでだよ……」
「こんな偶然あるかなあ」
「いや、まあ、学力はもともと同じくらいだし。配点が決まってるんだから、だいたい同じ点数取るのもあり得ないってレベルじゃないとは思うんだけどさ」
「あー……そっか。それは確かに。簡単な問題と難しい問題で別れてたし、ない話じゃない……よな?」
「そうそう、そうだよ。あり得る偶然だよ。あるある。この程度はあるあるだ」
「だよね。そうだよね? 考えてみりゃ勉強は割といっしょにやってたわけだしな?」
「そう、それだ。それ言おうとわたしも思った。そりゃ同じところが解けるようになるよね。あはは」
「いやー冷静になれば驚くほどのことじゃなかったよな! はっははは」
「…………」
「…………」
「……で、ほかの教科も比べてみる?」
「やめておこう」
「…………」
「…………」
「そうだね。やめておこうか」
「それがいいな。うん。別にわざわざ競わなくてもいいよな?」
「そうそう。勉強はあくまで自分がどうかだからね。ほかの誰かと比べることじゃない」
「その通りだ、いいこと言ったよ。まあ、まさかほかの教科まで被ったりはしてないだろうけど」
「うん。まさかほかも同じ点数ってことはないと思うけど。それはそれとしてね?」
「それな。まあ、今後もテストはあるわけだしね?」
「そうだね。どうせいっしょに暮らしてるんだしね? 今後も同じような感じになるかもしれないけど、それはそういうものっていうアレだよね」
「よし。この話はここまでにしよう」
「うん。たまには未那もいいこと言うよね」
「あはははは。叶ちゃん、たまには余計だろ?」
「いっけなーい」
「やだー、棒読みー」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「ご飯にしよっか」
「そうだな。手伝うよ」
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