第174話 新しい約束

 治療専門の教師にルーツを預け、俺が地上へ上がった時には、すでに魔族との戦いは終わっていた。駆けつけたカイルやノービス、魔導学園教師。そして、フェニクスと、そのフェニクスについてきた老狼を始めとする強力な魔物達が、魔族の残党を蹴散らしたようだった。


「手配中の凶悪犯を確認! 本官が追跡しましたが、まんまと逃げられてしまいました!」


 学園の敷地内を見回っていると、なぜか警察官気取りのフェニクスが、俺に会うなりそう言った。手配をした覚えはないし、フェニクスが馬鹿な遊びを始めるのはいつものことなので、それはこの際どうでもいい。あの場では、仕方のなかったこととは言え、あいつを逃したことが悔やまれる。俺の目が盗まれたことも気になるが、ルーツに傷を負わせるほどの敵。厄介な存在になることは間違いない。


 結局、目的は何だったのか。これが仮に戦争中であれば、被害が大きかったのは向こうだし、学園という場所を守りきった俺達の勝利という形に落ち着くのかもしれない。でも、今回は違う。綺羅びやかだった学園の建物が所々崩れ、多数の負傷者も出てしまった今回の一件で、俺達が得したと思えることなど一つもない。割り切れない気持ちは残ってしまったが、とにもかくにも、魔導学園襲撃事件は、敵指揮官の逃亡という形で、終わりを迎えた。


「今回は、君達がいてくれて助かったよ。また、いつでも来てくれ。生徒達も待ってる」

「こちらこそ、お世話になりました」


 学園長と握手を交わし、わざわざ見送りにきてくれた他の奴らとも、別れの挨拶をする。教師が数名に、マジカル・スマイルの連中。ダンジョン攻略で同じパーティだった不届き者達。こうして勢揃いしているところを見ると、碌な奴がいないな、と改めて思う。少し離れた所にいるカイルは、女生徒に囲まれ、鼻を伸ばしていた。


「あ、エンジ先生。フェニクス様を、少しの間お借りしても? 伝説の不死鳥を研究できる機会なんて、この先ないと思うので」


 うるさく騒ぐマジカル・スマイルの連中を宥め、不届き者たちにこれからの学園生活について釘を刺していると、召喚魔法を研究していると言っていた教師が、俺に話しかけていた。――フェニクスは不死鳥ではないし、様付けなんてしなくていいのだが。


「ああ、もちろんいいぞ」

「いや、駄目だろ! エンジてめえ! 俺様をこんな場所に置いていく気か!? 可愛い雌の一羽もいねえじゃねえか!」


 俺が満面の笑みで快諾すると、横にいたフェニクスが、俺の足をゲシゲシと蹴りながら抗議してきた。主人を足蹴にするような鳥はいらない。しかし、この先のことを考えると、こいつの力が必要になるかもしれないな。考え直した俺は、渋々、フェニクスを連れていくことにする。


 学園での仕事を終えた俺とカイルは、次なる目的地へ向かおうとしていた。依頼内容は後述するが、今度もまたアンチェインの依頼絡みだ。学園襲撃の後処理も中途半端な状況だったが、事態は急を要するとのこと。今回だけは、魔力文書を書いている暇もなかったらしく、ネコが直接やってきて、俺達に伝えた――


 ……。


「お手紙先輩! 私も行きたいです!」

「お手紙? 駄目。過酷、困難、危険。新入りは待機」

「えぇー! そんなぁ!」

「そういや。俺も新人だっ……」

「エンジは来る。呼ばれてる。親方様は、最悪そこの金髪抜きでも、エンジは連れて来いって」

「えぇー! そんなぁ!」

「エンジ、今回は諦めろ。あと、お前がノービスの真似をしても、可愛くないぞ」


 行くのは、俺とカイルのみ。依頼の内容を聞いてなるほど、とは思ったが、ノービスのような将来有望な新人は、大事に育てていく方針らしい。俺も新人の部類に入るはずだが、なぜか参加が決まっていた。もちろん、大事に育てられた覚えもない。


「遅くても明日には出発して。にゃあ、後で……じゃあ、後で」


 突然の話ではあったが、学園長も小耳に挟んでいたらしく、朧気に理由を話すと、俺達が学園を去ることを認めてくれた。これが昨日の話。そして、今に至る――


……。


「うふ。エンジせ~んせ! 私を受け取って!」

「結構です」

「はうう! 何でよ!」


 召喚魔法の教師の次に話しかけてきたのは、ちびっこ女教師。何でよって、俺こそ何でだよ。正直、話しかけてきてほしくはなかったが、最後なので付き合ってやることにする。付き合うというのは、そういう意味ではない。


「そのうち、誰か見つかるって」


 その性格を、変えることが出来ればな。


「いなかったもん! ……雨が振ってきちゃったらどうするの? 濡れちゃうよ?」

「は?」


 唐突に何だ。


「か、傘でもさせば?」

「ううん。傘はいらない。私が欲しいのはね? 傘のない、あなたのキノコ。テヘペロリン」


 やっぱり、無視しておけばよかった。俺が呆れた目をして、じっと見ていると、雨降ってきちゃった。と、頬に手を当て、体をよじっていた。――気持ちわる!


「学園長。この教師は首にした方がいい。今すぐに」

「エンジ君。私にそんな余裕はない。首になるのは、私の方だ」


 学園長が小声でぼそりと呟いていた。


「エンジ君、今回はありがとう。私からも、礼を言わせてもらうよ。ところで、あの地下についてなんだけどね?」


 ちびっこ女教師を首にするよう進言した俺の先にいたのは、何らかの紙の束を持ち、冷や汗をかく学園長と、教頭だった。紙の表紙には、使途不明金の行方、と書かれているのが目に入り、素早く、学園長と視線を合わせる。


――エンジ君。心苦しいが、この学園を去る君に頼みたい。

――分かってますよ。俺が、全ての罪をかぶればいいのですね?

――おお! では頼む! 私だけは、君という素晴らしい教師がいたことを、忘れな……。


「全て、学園長に命令されてやったことです。私は、嫌々お手伝いを」

「ええ!?」

「そうか。正直に話してくれてありがとう。では学園長、処分は追って。なあに、『本来の目的』はどうあれ、今回は非常に役立ったのだ。それほど酷いことにはなるまい」

「えええ!?」


 だ、そうだ。しっかり反省して、いい学園長に生まれ変わってくれ。学園を去る俺から言えるのは、それだけだ。


「ちょっと!? エンジ君?」

「もう、びしょ濡れだよ~! 早く蓋をしなきゃ!」


 場が荒れてきたな。だが、これこそが旅立ちの合図。湿っぽいのは苦手なんだ、とそれらしいことを自分に言い聞かせつつ、背を向ける。


「エンジ先生! 思い出ちょうだい! 思い出!」

「やめろ! 離せ! パンツを脱ごうとするな!」


 公衆の面前でどんな思い出を作る気なのか。背を向けた俺のズボンを引っ張っていた、頭のおかしいちびっこ女教師を蹴り飛ばすと、そろそろいくぞと、カイルに視線を送る。


「やっぱり若い子がいいんだ! そうなんだね! クリアちゃんのお尻には、あんなにご執心だったもんね!? 私だって見た目は若いのに! キャピピ!」


 見ていたのか、こいつ……。地面を転がった先で、ぎゃあぎゃあと叫ぶ女教師を無視して、俺はカイルと歩きだす。目的地は、モンブラット王国にあるという、アンチェイン秘密基地。ネコの話によれば、すでにその場所に俺達の、つまりはアンチェインのボスが到着しているとのこと。いよいよ、親分とのご対面だ。あの女教師を凌ぐほどのアホが、そこにいる可能性があるのだ。気を引き締めないと。


「エンジさん。待ってたよ」

「むう。非常に残念ですが、今回は諦めました。先輩方……無理しない程度に、頑張ってくださいね!」

「待たせたな。ノービスも、クリアと仲良くしてやってくれ」

「当然です! あの変な連中も、クリアちゃんには近付けませんので! ご安心を!」


 門の外で待っていたのは、ルーツとノービス、そして、クリア。この中で、ルーツだけは、俺達と共に出発する予定だ。今回の依頼内容は、ルーツにも大きく関係していることだったので、ネコから聞いた事情を話すと、一も二もなく、僕も連れて行って、と俺達に言ってきた。親分の許可はもらっていないが、まあ問題はないだろう。


「あいつらは、ちょっと変わり者だが、案外いい奴らなんだ。程々にな」

「そうなんですか? でも、名前すら知らないって言ってませんでした?」

「うん」


 最後まで名前は分からなかったが、俺とあいつらの間には、確かな絆がある……はずだ。ちょっと、暇な時にでも聞いておいてくれ。ノービスがカイルと話し始めるのを見ると、俺はクリアの方を向いた。


「……約束だから。今度の約束は、絶対。絶対に守って」

「分かってるよ」


 約束、か。念を押すクリアを見て、笑みが溢れる。俺とクリアが行っていた勝負。最後の最後で、俺はこいつに負けたのだ――


 ……。


「エンジ、行っちゃうの?」

「ああ」


 ネコから話を聞いた後、俺はクリアに学園を去ることを伝えた。しゅんと、俯いてしまったクリア。だが、これも仕方ない。魔族の襲撃なんてものがなくとも、元々このくらいの時期に去るつもりではあったし、今回、緊急で入ったアンチェインの仕事も、到底無視できるものではないからだ。


「じゃあ……エンジ。今から私に付き合って?」


 最後にチャンスをちょうだい? と、クリアは続けて言う。俺は頷き、こっちこっちと袖を引っ張るクリアについていった。


「こんな、何もない場所でいいのか?」

「うん」


 連れ出されたのは、建物の外。学園が管理している大きな庭園の一角だ。小さな池と、広大な花畑が広がるその場所は、戦闘の跡もなく、遠くにではあるが、ちらほらと学園生も歩いていた。ここで俺は、クリアに一対一の決闘を申し込まれていた。


「言っておくが、わざと負けるなんて真似はしないぞ?」

「うん。そうして。ううん。そうしてもらわないと、困る」


 見晴らしもよく、障害物すら見当たらないこの場所で、俺がクリアに負けるなんてことはあり得ない。再度確認をするも、クリアの意思は固く、それならば、と、俺は黙って一つ頷いた。


「いいよ」


 準備をするから、ちょっと後ろを向いてて。と、言われていた俺が振り向くと、長い髪をリボンで一つに束ねたクリアが、そこに立っていた。疑うわけではなかったが、どうやら、本気で戦うつもりのようだな。


「エンジ。私のお願いを言うね? ……私は、エンジと一緒に生きていきたい」


 それが、お前の。俺は、少しだけ笑う。


「なんだ。もう勝った気でいるのか?」


 首を横に振るクリア。


「ううん。そうじゃない。そうじゃないよ。でも、それだけは言っておこうと思ったの」

「そっか」


 少しだけ目を座らせ、身構えたクリア。俺もそれを見て、戦う準備をする。何を言われようとも、手は抜かない。きっと、こいつだってそれを望んでいるはずだ。


「続きは、勝った後に!」

「こい!」


 ……。


「――はあ、はあ。駄目。魔力、空っぽ」


 荒い息を吐くクリア。結局、クリアの魔法は俺に届くことはなかった。手は抜かないと言っても、害を加えるつもりはない。迫りくる魔法を、全て防いだ。全て、撃ち落とした。豊富な魔力量を活かしての、威力のある攻撃、畳み掛けるような攻撃に、可能性は感じた。才能は、俺なんかよりも上だろう。それでも。


「やっぱり。エンジは凄い。分かってた。……分かってたんだけどな」

「お前はよくやった。数年も経てば、立場は逆になってるかもな? でも、今回は俺の――」

「まだ」


 俺の勝ちだ。そう言おうとしたところで、クリアが口を挟んだ。……まだ? ここから、何をしようってんだ? 魔力もすでに空のくせに。


「まだ」


 魔力切れが近いのだろう。クリアの足は、震え始めていた。クリアはまだだと言いはるが、こいつにできることは、もう何もない。俺は、いつ気絶するかも分からないクリアを受け止めるため、歩いて近付いていく。


「もういい。もういいよ。気を失う前に、その辺で休んでおけ」

「まだ。……あ」


 風が吹いた。ざあっと吹いたその風は、俺達の髪を揺らし、辺り一面に花びらを舞わせる。そして、ひらりとめくれ上がった、クリアのスカート。


「ん?」


 スカートがめくれ上がる。それは、この際いい。自然の摂理だ。ごちそうさま。問題は、その先。クリアが、下着を履いていないように見えた。見えてはいけないものが、見えた気がした。――さすがに、見間違いか? だってそんな。なあ?


 俺の困惑をよそに、じっとこちらを見つめるクリア。俺が真偽の審議を行っていると、狙ったように吹いた、二度目の風。クリアは動じず、髪を抑え、前を向いていた。


「ばっ! お前、もっと他に、抑える所があるだろうが!?」


 だっと駆け出し、クリアの下半身に抱きつくようにして、俺がスカートを抑える。なんて世話のやける奴。なんて無防備な女。近くには見当たらないとは言え、ここには人がいるのだ。突然、魔法の撃ち合いを始めた俺達を、遠目ながら見ていた奴もいるかもしれない。――そもそも、何で履いてないんだ? こいつ。


「捕まえた」


 ……ん? 聞こえてきた声に反応し、顔を上げる。


「エンジは身動きがとれない。私の勝ち」


 少し弾むような声。俺の頭を、幸せそうな顔のクリアが抱きしめていた。


「いや、まだ捕まってないだろ。だって、俺が……」

「エンジは離さない。他の人に見られちゃう。離しちゃだめ」


 どういうことだ。これは脅しか何かか? いやでも、恥ずかしいのは、お前だけだぞ? 俺ほどの男となれば、この手を離すことくらい……。


「離さないで」

「お前な」


 はあ、と溜息を吐き、そのままの状態で周囲を見る。俺の目に飛び込んで来たのは、辺り一面を覆い尽くすほどの、花びら。どうやら、風はこいつの味方らしい。それを見た俺は、もう一度溜息を吐くと、抵抗を諦めた。


「エンジ。勝った時のお願いだけどね」


 ああ、それか。続きがどうとかって言ってたな。耳元から聞こえる小さな声に、耳をすませる。


「私が学園を卒業する時に、迎えにきて」

「それは……」


 さっき言っていた事とは、少し違う。クリアは、とうとうと語りだした。


「エンジと一緒に生きていきたい。それは本当。でもね、違うの。今の私じゃ、まだ駄目なの。……もう少し、何とかなると、思ってたんだけどね」


 先程の決闘のことを言っているのだろうか。詳しくは、分からない。今はただ、クリアの言葉に、耳を傾ける。


「幸せも、悲しみも、苦しみも、全部エンジと半分こがいい。ただ、付いていくだけじゃ嫌。私が言った、一緒に生きたいっていうのはね、そういうこと」

「そういうこと、ね」

「そういうことなの」


 ふふっと笑うクリア。こいつの気持ちは……まあ、分かった。俺はいくつかの言葉を飲み込み、今聞けることだけを、聞いてみる。


「前にも言ったが、俺は怪しい盗賊団に所属しているぞ? お前も、盗賊になるってことになっちまうが、いいのか? あ、悪事を働いた際の罪悪感を、半分受け持ってくれるのは助かるけどな」

「うん。エンジがいるなら、私もそれでいい。でも」

「お前が盗賊なぁ。向いてないと思うけど……でも?」


 茶目っ気を感じさせる表情をしたクリア。こいつも、こんな顔できるようになったんだな、と俺が思っていると。


「罪悪感は、半分じゃないよね? だってエンジ、罪悪感とか感じてなさそう。きっと、私だけが苦しむことになる」

「感じてる。びしばしと感じている。実は、すでに心が折れそうなんだ。ぽっきりと」

「ふふ。嘘つき」


 表情だけでなく、生意気なことも言えるようになったらしい。これも成長といえば、成長なんだがな。


「あーあ。やっぱり、俺に教師は向いてなかったな」

「何で?」

「教え子から、盗賊になりたいなんて言う奴を出してしまったんだ。教師失格だろ」


 少し違うが、ノービスについても似たようなもんだ。将来ある学園生が盗賊になりたいだなんて、世も末だな。


「うん。そうだね」

「ちょっとは否定しろよ」


 今のはそういう流れだろ。否定しておいて、俺に良い気分を味わわせろよ。全く……。


「エンジ、約束ね? 今度の約束は、絶対だから」

「分かったよ」


 お前が学園を卒業する頃に迎えにくる。それでいいんだろ? その時、お前がどうなっているのか、俺自身がどうなっているのか、今は分からない。もしかしたら、俺がこき使われた挙句、死んでいる可能性だってあるし、クリアだって、やっぱり盗賊になんてなりたくない、と言うかもしれない。でも、それならそれで、別にいいさ。負けは負け。約束は、約束。覚えておくよ。


「……エンジ、あの」


 ぽっと、頬を赤らめるクリア。いつの間にか、スカートの中に入っていた俺の手は、さわさわとクリアの尻を撫でていた。ふんわりとしていて、それでさらさら。この尻の感触も、覚えておいてやるよ。


 ところで、今回のすっぽんぽん大作戦は、誰の入れ知恵だったんだ――


 ……。


「あいたっ! なんですかいきなり!」


 クリアとのやり取りを思い出していた俺は、ノービスの頭を引っ叩いた。最初は言いづらそうにしていたクリアも、俺が詰め寄ると、最後には口を開いた。何でも、学園内で繰り広げられていた、俺とクリアのおかしな行動を見ていたノービスが、クリアに事情を聞いた後、言ったらしい。私に、いい考えがあります、と。


「何がいい考えだ。お前は危うく、友達を学園中の晒し者にするところだったぞ?」

「何の話ですか? ……あれ? まさか、クリアちゃん」

「ううん。違う。違うの。私は、何もしていない」


 目を丸くするノービスと、顔を赤らめるクリアを見つつも、俺はカイルとルーツに合図を送る。名残惜しい気持ちもあるが、そろそろ行かないとな。


「ノービス。クリアちゃんに謝っとけよ?」

「はは。二人共、仲良くね。じゃあ、また」

「何でカイル先輩は、いつもエンジ先輩の味方をするんですか! 私の方が正しいときだって、あるはずなのに!」

「日頃の行いの差だろ」

「それなら、エンジ先輩は最悪じゃないですか!」


 何だこいつ。もう一発殴っておいた方がいいかな? いいよね? 俺が目を細め、ノービスを睨んでいると、クリアが笑みを浮かべ、横で小さく手を振っていた。何だか毒気が抜かれてしまった俺は、くるりと背を向ける。


「死んじゃだめだよ。それも、約束」


 最後に、顔だけをクリアに向けると、俺は歩き出した。ひとまず向かうは、アンチェイン秘密基地。依頼内容は、魔族に占領されてしまったバルムクーヘン王国、正確には、王城とその城下町の奪還。どうも、今回はボスが直接絡んでいるらしいが、もはや、何かを盗むって範囲ではない。とてつもなく厄介な仕事、というか、一盗賊団に何を期待しているというのか。詳細は分からないが。――約束の一つくらい、守ってやらないとな。


「行ってらっしゃい。エンジ」


 俺は、背に向かって手を振った。


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