学院入学編
第1話 何でこうなるんだぁ!?
学院の中ではもう歓迎モードだった。俺が聖地に来ることはもう皆知っていたらしい。天使のお告げがあったとか。
あんの野郎!余計騒ぎにしてどうすんだよ!!
「ようこそ、黒鉄愁斬様。どうぞこちらに」
そう言って通されたのは応接室っぽい部屋だった。
「愁斬様は何科をご希望ですか?」
「あの、何があるのか分かんないんですが」
「ああ!そうでしたね。この学院は3つの学科に分かれおりまして、魔術科、剣術科、総合科で分かれております。一番多いのが剣術科、その次が魔術科、そして総合科になっております」
「そうですか。俺は総合科に入ります。剣術や魔術も得意ですので」
「了解しました。では、次は学院長に会いましょうか」
そう言うと、何か円っぽいものに乗せられて転移した。
ここが学院長室か。
俺がノックをするとすぐに返事が帰って来た。そして扉を開けると、そこには小さなロリが座っていた。
「ようこそ、我ホーリー学院へ。君が黒鉄愁斬だね。私はサフィナル・リブラリナね。サフィナルでいいからね、よろしく愁斬君」
「あ、ああ」
それにしてもちっさいな。本当に学院長なのか?
「あ、今失礼なこと思ったでしょ。ま、こんな背だししょうがないけどさ」
「すまない」
「それに、君よりも年下だしね。別に敬語じゃなくても構わないよ」
「分かった」
そう言うとサフィナルは俺を上から下まで見ていた。
「うん。大丈夫だね。あと、君は住む所あるかい?」
「いいや。今まで旅をしながら歩いてたし」
「そっか。じゃあ、この学院の寮に住むといいよ。宿に泊まるって言っても、お金がかかり過ぎるから。それに、寮なら三食全てお金はいらないし寮の者なら色々と購買で手に入るから」
俺は目を輝かせた。そしてすぐに俺は返事をした。
「さて、どうする?」
「寮に入る」
俺は聞かれた瞬間に返答をした。サフィナルはニヤッとしてから鍵を渡した。
「じゃ、制服は明日渡すから。今日は扉の前で聞き耳を立てている国王2人に案内してもらうといいよ」
そう言うと、扉の外でガッシャーンと音が聞こえた。
まさかあいつらが盗み聞きとは。
「分かった。じゃあ、失礼する」
俺は学院長室を出た。目の前で転がっていた女の2人を放っておいてそのまま歩いて行った。
「あ、愁斬!待て!!」
「そうよ!無視しないの!!」
俺は何も気にせず、どんどん歩いて行った。
取り敢えず、道は分からないが人に聞くとするか。
丁度前に女生徒がいた。
「悪いんだが、寮の場所を教えてくれないか?」
「え。あ、この道をまっすぐ行って右に曲がると噴水があるってそこの大きな建物です」
「ああ。ありがとう」
俺は走って寮に向かった。
俺の部屋は一人部屋なはずだから、誰もいないだろう。
部屋に入ると、結構広かった。
「立派な部屋だな」
俺が後ろを向くと、タオルで頭を拭き途中でフリーズしている女生徒がいた。
「……な、んで」
やばい!ここでは変な言い訳は通用しない!!さて、考えるんだ。黒鉄愁斬!何を言ったらいい!?
「す、すまない。俺、ルームメートがいるのを知らずに入ってしまった。取り敢えず俺は外に出るから」
俺はすぐに部屋を出た。そして早歩きで学院長室に向かった。
「おい!サフィナル!!」
「おっとどうしたの?そんな汗だくで」
俺はサフィナルに近づき、机を叩いた。
「俺の部屋にはルームメイトはいないんだよな?」
「あれ?言ってなかった?君の同室は女の子。アナスタシア・アリファーンさんだよ」
俺はサフィナルの肩を揺らしていた。
「言ってねぇよ!ていうか、年頃の男女が同室なんてあり得ないだろ!?何考えてるんだよ!!」
「ま、まあまあ。落ち着いて」
「落ち着くか!!女子と一緒でやすらぐか!!」
「君の転入はいきなり決まったから部屋が空かなかったんだよ。だから、1ヵ月くらい我慢して。ね?」
「ね?じゃねぇよ!!」
俺は思いっきりサフィナルの頭に頭突きした。
結局、俺は部屋に戻る事になった。そしてノックをした。
何で俺の部屋なのにノックして入らなくちゃいけないんだ。
「はい」
「入ってもいいか?」
「あ、はい!」
俺がドアを開ける前にドアが開き、やはり女の子がいた。何か見覚えがあるような気が……。
「やはり。先日は助けていただき、ありがとうございました」
あ、思い出した。この前ナンパされてたのを助けた女の子だ。
「その、私はアナスタシア・アリファーンと申します。気軽にアナスタシアで結構ですので」
「ああ。俺は黒鉄愁斬だ。嫌だと思うけど、1ヶ月間よろしく」
「嫌だなんて滅相もありません!!」
「そ、そうか。そう言えば、アナスタシアを助ける為に俺を蹴って来た男は?」
そう言うとアナスタシアは顔を真っ青にして頭を下げた。
「あの時はすいません!本当に!!」
「いいから。で、あいつは?」
「あの子はライム・スワイプスです。昔からの幼馴染で」
「小さい野郎だな」
そう言うとアナスタシアは困った顔をして頬をついた。
「あの子、女の子なんです。男っぽいけど」
「え!そうだったのか!?」
俺は思い出してしまった。男だと思ってたから言い分からしててっきり好きな子なのかと。あー!めっちゃ恥ずかしいじゃん!!今なら死ねる。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。大丈夫だ。あのな、アナスタシア。俺が女に興味がないとはいえ、その部屋着は無いだろう」
アナスタシアの格好はキャミソールにショートパンツと言う超無防備な格好なのだ。何故俺がキャミソールの存在を知っていたかと言うと、妹がよくつけていたからである。
「す、すいません!いつもこんな格好なので」
「いつもって、もしかして他の奴の部屋に入る時もか?」
「はい。駄目ですか?」
「駄目だな。女子としてはしたないぞ」
「ごめんなさい」
俺は風呂から出て調理室に向かった。その目的は小腹が空いたからであった。
「ま、残り物で何か作るか」
冷蔵庫を見ると、中には野菜がある。あとは、米がある。結構食材はあっちの世界と似てるんだな。
俺は取り敢えず米とほうれん草のチャーハンを作って食べていた。
「……ちょっと味薄いな。でも、食べれないほどじゃないしいいか」
黙々と食べていると、人影が入口にあった。俺は反射的に刀を構えて隠れた。
「いい臭いがする」
誰だ?こんな時間にここに来るやつなんて。
考えていると、そいつの腹が鳴った。
「……お腹すいた」
単純に飯目当てか。
俺は隠れた場所から出て声をかけた。その女の子は水色の髪に結構小さい体だった。
「飯作ってるけど、食うか?」
そう言うとそいつは「うん!」と元気よく言った。
俺は余った物を皿に乗せた。
「ほい」
「いい臭い。いただきます」
「召し上がれ」
そう言うとすぐに口に運び、一口食べた。するとさっきまで動かなかったアホゲがヒョコヒョコと動いていた。
「美味いか?」
「うん!」
「そりゃよかった。じゃ、俺は行くから。食器は自分で洗えよ」
「分かった」
俺はそのまま部屋から出て、部屋に戻った。
朝起きると、もうアナスタシアは朝食の準備をしていた。
「おはようございます、愁斬さん」
「ああ、おはよう。何作ってんだ?」
「ニキュロッゾと言う物です。この世界の伝統料理ですよ」
アナスタシアは俺に何で知らないのかと聞かなかった。まあ、俺の噂なんて全国に広まっているか。
俺は盛られた皿をテーブルに持って行った。
「うん!美味い!!」
「よかったです。そうそう、先程部屋にメッセージがあったんです。学院長がメッセージを見次第、学院長室に来るようにと」
「分かった」
あいつ、次は何をする気なんだ?俺にはさっぱり分からん。
「おい、サフィナル。何の用だ」
「お、やっと来たね」
俺が部屋に入ると、女生徒が7人座っていた。セリスティア、リーリャントも座っていた。
「愁斬。やはり来ていましたか」
「やあ、愁斬!!」
そう挨拶してきたのはアンリとサラだった。
「お久しぶりです。約束通り、1週間で来て下さいましたね」
「見ない間に逞しくなったね」
このメンツって事は、もしかしてそこの3人は国王か。
「あら、この子が黒鉄愁斬?結構若いじゃない!!」
そう言うと立って俺を抱きしめた。
「ちょっ!!」
「んー!可愛い!!」
「まったく。どうしてそんな下底生物を抱きしめられるか分からないわ。ねぇ、マイーリア」
「……別にどうでもいい。私の読書を邪魔する奴じゃなければ」
どうしてこんなに個性的な奴らが集まったんだか。この世界はどうなっているんだ?
「さて、愁斬君。君にはこの7人の中の一人と勝負をしてもらう。ここにいる全員は総合科に入ってるから、剣も使えるよ」
ああ、この人俺の実力を見たいから出したんだな。
俺は7人を見た。
流石に国王だ。皆強いんだろう。だったら……。
「俺はセリスティアと戦う」
「ほう、私か。ま、予想の範囲内か。受けて立とう」
「じゃ、決まりね」
トイレから出たら異世界に来ちゃいました。 伊月朱李 @tomokakichi
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