第12話 誰だ?俺に矢を向けた奴は

俺は待望の飯屋に入った。ここでは冒険者が優先的に座れるという優れた掟があるらしい。現に俺は並んでいる皆を差し置いて飯を食っている。

「はい、お待ち。カロポナーラピザね」

「おお!うまそー!!」

俺は早速一口食べた。

「美味い!今までの飯屋でダントツだぞ!!」

「お客さん、嬉しいね。そんなこと言ってくれるなんて」

俺はバクバクと食っていた。そしてすぐに飯屋を出た。

「あー、腹いっぱい食ったな。結構安かったし」

歩いていると、女の子が3人の男に囲まれていた。

「急いでいるんですが」

「いいじゃねぇか、俺達と遊ぼうぜ?」

まったく胸糞悪いな。正直どうでもいいんだけど、見て見ぬふりはあんまり好きじゃないし。

「よっ。待たせたな」

「あ?何だてめー」

「そいつの連れだけど?何か文句でもあんのか?」

俺はナンパ男達を睨みつけた。するとナンパ男達は飛び上がり逃げて行った。

「あ、あの、ありがとうございました」

「別に。それに俺が助けなくても良かったみたいだしな」

俺は後ろを見た。すると男子が走ってこっちに向かってきている。

「アナスタシア!」

男子は俺を見るなり蹴り飛ばしてきた。

「よくもアナスタシアを!!」

「ったく。どいつもこいつも話を聞けよっと!!」

俺は男の顔に拳を向けた。もちろん寸止めで。

「何でこの世界は早とちりする輩が多いんだ。少しは話を聞けってんだよ」

「ライム、違うの。この人は私を助けてくれた人なの!!」

「え!」

俺は頭を掻いていた。

「ご、ごめん!てっきりあんたがアナスタシアをナンパしてんのかと」

「馬鹿じゃねぇの?俺はな、女には興味ねぇんだよ。よく覚えておけ。じゃ、俺は行くわ。ちゃんと守ってやれよ」

俺はその男子の頭をクシャクシャとやってその場を後にした。


俺は宿屋で泊っていた。正直、今日は疲れた。やっぱり人の目線は疲れる。そう言えば、この前からずっと十六夜の手入れをしていない。寝る前に手入れをしよう。そうしたら疲れなんて吹っ飛ぶかもしれない。

俺が十六夜を取りだした途端、光が出て来た。

「よぉ、愁斬。会議の時間だぜ」

「もうそんな日か?つーか、俺にも予定があるんだから予告くらいしろよな」

「悪い悪い。剣何か持ってなにすんだ?」

「手入れだよ。手入れ。しばらくやって無かったし、やろうと思ったら会議ですよ。ま、天界で出来るしいいんだけど」

俺は指輪に強く念じた。すると、光を帯びてすぐに天界に着いた。本日天界2度目!2回目とあり、感動も薄れるもんだな。

「お待ちしておりました、愁斬殿」

「ああ。で?議案は何」

「はい、今日の議題は聖地の事です」

聖地の議題。それは結構大事な事だ。聖地は元々神と交信する為に作られた最初の国。その為、聖地の決定権は天使が考え伝える事となっている。

「今、聖地は何者かによって侵略されつつある。それが人間ならいいが、噂では魔族らしい。まあ、なんだ。愁斬、お前が潜入してほしいんだがいいか?」

「ま、俺は人間だからそれが無難だな。で、俺はその怪しい奴を見付ければいいのか?」

そう言うと、ウリエルが「そうだ」と言った。

ウリエルは第五席に座る大天使の一人。厳しい性格で口調も毒舌。ま、正直俺は嫌いではない。

「愁斬、お前は取り敢えず目立て。悪魔は強い奴を自分の手中に入れたくなる性質を持っている。目立つのだ」

「分かってる。じゃ、会議は終了な。丁度郵便も来た事だし」

俺は上を見た。すると手紙が空から降って来た。

「”黒鉄愁斬殿。あなたの評判は鐘がね聞いております。私達ホーリー学院の教師で会議をした所、あなた様は学院入学が決まりました。なので、いつでもよいのですが一度学院にお越しください。学院長サフィナル・リブラリナ”だとさ」

「タイミングがいいな」

「ああ。……よし。これで会議は終わりだな。じゃ、俺は部屋にこもる。いいか?俺の邪魔をしたらお前らの大事な羽をむしり取ってやるから覚悟しとけよ?」

俺はさっきの籠った目で見た。天使6人全員が顔を青くして頷いていた。


「……ふぅ。手入れ終了」

「終わったの?」

そう言って入って来たのはジブリールだった。

「終わったけど、抱きついてくんなよ。そしたらお前の頭をこれで潰すからな」

「あ、あはは。冗談でも怖いよ、それ」

俺は剣を鞘に入れて、立った。

「どこ行くの?」

「下界だ。手紙も来たんだし、会いに行かないといけない奴もいるし」

「そうなの?あ、サプライズがあるから下界で楽しみに待っててね」

「お前の笑顔には楽しみな事なんてないと思うんだが」

「酷い!」

俺は指輪に念じ、下界に戻って来た。やっぱり2時間位しか進んでいないらしい。

もうやることないしな。取り敢えずは聖地にもっかい行くか。

俺は宿を出て正門に向かった。

そしてカードを見せた後、飛翔フライで聖地に向かった。


しばらくして、魔力切れになりそうだったので森の木の上で寝る事にした。

「よっと。赤竜帝、力は戻ったのか?」

「いいや、まだだ。だがもう少しすればどうにかなる」

「そうか。じゃ、アイズ。見張りよろしくな」

「了解しました!」

俺は木で目を瞑った。

「お主らそうやって主の見張りをしているのだな」

「まあな。我が駄目な時はアイズだ。多分だが、お主の出番はそうそうないだろうよ」


1時間位して、悲鳴が聞こえた。

「きゃー!!」

「……アイズ」

「えっと、右側から人影2人と後ろからワイキングベアーが追いかけられていますね。どうするんですか、ご主人」

俺は立って剣を抜いた。

「寝覚め悪いし、助けるよ」

「そう言うと思ってました」

ったく。冒険者のくせによわっちーな。

俺は木を飛び越えながら人影に近づいて行った。

「みーつけた」

俺は木を飛び降りて人影に話しかけた。

「おい、大丈夫か?」

「は、はい」

「じゃあ、あと50メートル全力疾走だ」

「え?」

「早く行け!!」

「はい!!」

俺は剣を構えた。ワイキングベアーは俺の前で息を荒くして大きく立っていた。

「大物っぽいな」

「うがー!!」

ワイキングベアーの口から唾がめっちゃ出て来た。

「うわっ!きったね!!良かった、天使の正装じゃなくて」

俺は小刀を振り上げた。それにつられて上を向いたワイキングベアーに剣を振り抜いた。

「ぎゃおーん!!」

そう言うと塵となり消えた。

「マジで汚ねー」

そう言って道を戻ると拍手をしてこっちに来る男がいた。

「凄いね、君」

「本当です!……あ!!」

声を上げた奴を見ると、この前会ったランクCの剣ポッキリ君だった。

「先日はお世話になりました。あと、これ」

差し出してきたのは短剣だった。

「ありがとうございました」

「別に。でも、何でお前またあいつにおっかけられてんの?」

「それは……」

そう言いかけた時、後ろから矢が飛んできた。俺はそれを避け、手でつかんだ。

「誰だ?俺に矢を向けた奴は」

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