第11話 驚くことばかりやってくれる

俺が次に向かったのは、トルグルフ王国。トルグルフ王国はとても水が豊富で料理が美味い都市と聞いていたので行ってみたいと思っていたのだ。

「どんな飯が食えるんだろう。美味いといいな」

俺が呑気に言うと、赤竜帝が口をはさんだ。

「主、そんな呑気な事を言っていてもいいのか?多分、主がヒソヒソと歩けないぞ。なにせ、あのランクSの人間に勝ったのだからな。光の速さで噂は広がる」

「まじか。ま、当たり前か。取り敢えずそんときはそん時だな」

俺は何も考えず、歩いて行った。その考えない行動がこの後とんでもない事になるとは俺を含めその場にいた全員が考えていなかったのである。


「やっぱ、この世界って領地少なくないか?これが全部だったとしたら周りは海しか無いのか。ま、それもいいか」

「まあそうだろうな。……主よ、もうトルグルフ国領内だ。我は何も出来ぬから用心せよ」

「え、何でだ?」

「我は炎の精霊王の眷属だ。だから、水の精霊王が使役している所は我の力が衰えるのだ」

「へー。ま、俺にはアイズや白竜帝もいるし魔法が使えるからな。剣も。だから大丈夫だろう」

そう言うと、赤竜帝は答えなかった。寝てしまったのだろうか。

「ギルドカードをご提示願いし……」

門に立った女兵は動きを止めた。口をパクパクしながら俺の顔を見ている。

「ギルドカード」

「あ、はい!少々お待ちください!!」

そう言うと走って戻り、超特急並みの早さで帰って来た。

「ありがとうございます!」

そう言うと俺は門を通された。やっぱり赤竜帝の言うとおりだったか。ちょっと厄介になりそうだ。

俺は取りあえずギルドに行った。最新の情報はギルドの方がいい。

「いらっしゃいま……!?」

受付嬢は挨拶の途中で立ちあがり、俺を凝視していた。すると、周りの奴らも俺を見ている。

「な、なんだ」

「黒鉄様ですよね?初めまして、私ヴェーン・シャルロッテと申します。大変申し訳ありません。さあ、こちらにどうぞ」

俺は訳も分からずに奥に通された。そして扉を開けると、男が仁王立ちして俺を待っていた。

「お前が賢者級の冒険者か。結構若いんだな」

「お前誰」

「俺はダニエル・ファーレンガルトだ。ま、一応このギルドのギルド長をしている。で、何しにここに来たんだ?」

「別に」

俺は真顔でその質問に答えた。そして、すぐに俺は後ろに下がった。

「ほう。お前、本当に強いな」

そう言うとダニエルの手の上には小さな”水玉ウォーターボール”を構えていた。そしてすぐに消えた。

「あんた、俺をどうしたい訳?」

「いや。何となくな。そうそう、お前どこのギルド出身だ?」

「あ?俺は聖地だが?」

「ほう。聖地か」

何かありげな言い方だな。おい。

「聖地にゃ俺の嫌いな奴がいてな。ま、お前とは関係ないことだしいいんだが」

どうせ喧嘩別れしたパーティの仲間かなんかだろうと俺は高を括っていた。

「あのさ、この国の国王ってどんな奴?」

そう言うと、ダニエルはすぐに話してくれた。多分俺が流浪の民という噂も広がっているからだろう。

「この国の国王の名前はアリフィア・トルグルフ。水使いの魔女だ。結構無口だが腕は確かでいつもここにきているぞ。ま、もう学園が始まる時期だからもういないけどな。それにしても、お前は結構いい腕してるよな」

そう言うとダニエルは俺の腕を持ってジッと見ていた。

「や、やめろよ!気持ち悪い」

俺が腕を引き離すと頭を抱えて謝っていた。

「じゃ、俺はジュエルを交換してくるから」

俺は外に出た。ここに来る途中、大きなクマが何匹も出て来たので金を貯めるついでに狩っておいたのだ。手のひらサイズが5つと両手で持たないと落ちてしまうくらいの大きさのが2つで計7つだ。

「これは……。全部お売りですか?」

「まあな。逆に使う物があるのか?」

受付嬢も見た事がないらしく結構慌てている。

「……えっと、会計は500000Jです」

「おっけ。じゃ、よろしく頼む」

「畏まりました」

受付嬢は奥に走って行き、すぐに帰って来た。金は最近作った倉庫ポケットにしまっている。

「これで盗難される心配なし。んじゃ、俺はこれで」

俺は走って飯屋に向かった。

「まったく。驚くことばかりやってくれる」

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