第9話 正直、もう目立つのは嫌なんだけどな

俺はトゥグバリアの城を出た。

「あいつ、結構疲れるタイプだよな」

「確かにな。現に主は結構疲れてるしな」

赤竜帝はずっと出ていた。竜型では周りが騒ぐ為、人型にしてもらった。服は俺がこの前買った普通の服だ。アイズラビットのアイズも人型になっていて、女の子だからスカートにパーカーみたいな服を着せた。

「ご主人、これからどこ行くの?」

「うーん。取り敢えず情報を得ないとな」

俺は飯屋のおばちゃんに聞いた。

「なぁ、ここから一番近くて情報がいっぱい集まる国ってあるのか?」

「ああ、あるよ。この国の近くってなると、ニルフィオーレ王国だね。この国とは逆で、闇神の王であるサラ・ニルフィオーレが納めているとこだね。いつも暗いけど、結構活気があるよ」

「そうか。ありがとう」

俺はテーブルに金を置いて、その場を後にした。早く出たかったのだ。その理由は飯屋にいた女たちだった。

「本当に人気だな、主」

「こっちは疲れるから嫌なんだよな」

俺は門に行き、国を出た。


気付けばもう9時だった。まだトゥグバリア王国の領内らしく、まだ明るいのだ。さすが、光神の王だ。

「主、この先に何かいる」

「俺も気付いてた」

そう言うと、奥で何か倒れている蛇っぽい動物がいた。焦っているのか殺気だっている。

「これは……」

赤竜帝はそのまま止まってしまった。結構レアな感じらしい。

「なんだ?」

「そこの奴はやばい」

「なんだよ、ただの蛇……」

俺が近づいて行くと、蛇の様な物はどんどん大きくなっていた。これは……。

「ドラゴン!?」

「なんだ、赤竜帝ではないか」

そう言うと、そのドラゴンは赤竜帝に話しかけた。

「お前、何でこんな所に……ってここはウィルオーウィスプの範囲内か。でも、何でお前がここにいるんだ?」

「人間に襲撃されてな。お主はなぜここに?」

「ま、ここの人間に使役されているのだ」

そう言うとドラゴンは俺の顔を凝視した。

「この小さく愚かで愚鈍な人間がお主の主か?何の冗談だ?」

「冗談ではない。我はこの人間に戦いで負けた。だから契約をしたのだ」

結構要約して話ししたな。ま、俺はどうでもいいけどな。

「ほう。その目は嘘じゃないようだな。おい、人間よ。我とも契約をしてはくれないか?」

「何で。つーか、お前誰」

俺は即その質問をした。

「我は白竜帝だ。赤竜帝が楽しそうにしているのはみた事がない。恐らく、そなたのおかげであろう」

「そうか?そんな表情変えてないと思うけど」

「我には分かるのだ」

そう言って爪で腕から血を出し、無理矢理飲ませた。

「うぐっ!!な、何をするんだ!?」

そう言ってももう遅く、俺の首に刻印が掘られた事が感じた。

「これで我はそなたの使い魔だ。よろしく頼むぞ、主様」

そう言うとまた影に入って行った。

「また面倒な奴が増えちまった」

「そうだな」

俺は”飛翔フライ”を使ってその場を後にした。

「お前らって人間が嫌いとかじゃないのか?」

「我は嫌いだが、個々に寄ってだろう。アイズは普通らしいしな」

もう眠くなってしまったので、俺は木の上で寝る事にした。木の上はあまり魔獣がいないらしくうってつけの場所なのだ。


心地よく寝ていると、ドーンと大きな音が聞こえた。しかも近いのだ。俺は関係ない事だと思い、無視していた。

「た、助けてー!!」

声が聞こえたが、それは村人ではなく冒険者だった。

ったく。自分で焚き付けたんだから倒せばいい物を。

「主、助けてやるのか」

「まあな。ここで見逃して殺されでもしたら寝覚めが悪いだろ」

俺は木を降りて、剣を構えた。そして、一振りでその魔獣は消えた。後ろを向くと、俺と同い年位の男子が座りこんでいた。

「おい、大丈夫か」

「あ、ああ。どうもありがとう」

「別に。お前、冒険者なのに何で戦わなかったんだよ」

「それは……」

そう言うとその男子は剣を出した。だが、その剣は根元でポッキリと折れている。恐らく、さっきの奴に折られたのだろう。

「冒険者なら剣を2本持っているのは当たり前だろ。お前、冒険者何ランクなんだよ」

「僕はCランク。他の人ともいたんだけど、はぐれちゃって」

「ったく。とにかく、俺は行くからな」

俺は木の上で走って渡った。

「あ、やっと見つけた!大丈夫、オルフィー君」

「あ、はい。助けてくれた人がいたので」

「へー。もしかして、ワイキングベアーを一撃で仕留めたのか?」

「はい」


また面倒な事になった。次は暗くなったのだ。もうニルフィオーレ領に入ったのだ。「それにしても真っ暗で、月と星しか見えないな」

「精霊王シェイドの恩恵を受けているのだ。当たり前であろう」

「だよな」

しばらくすると、今度はすぐに門があった。

「ギルドカードが身分証明書をご提示ください」

俺はギルドカードを出し、すぐに手続きが終わった。

「はい、ありがとうございました」

すぐに渡され、俺は中に入った。

「結構活気があるんだな。今までの国も活気があったけど、どことなく違う雰囲気だ」

どんどん進んで行くと、ギルドがあった。今までの国と同じくらいだったが、結構賑やかだ。

俺が入ると、辺りは静まり返った。それは、俺の胸元に付いている賢者級のバッジだ。

「ちょっと聞きたい事があるんだが……」

受付嬢も動かない。見回しても皆目を合わそうとしないのだ。やっぱり賢者級の人間はいい奴がいなのだろう。地位が高い分、横暴になり強引になる。そして逆らう奴は皆殺す。それが高い地位に付いた人間だ。

「もしもーし」

俺がそう言うと、受付嬢は動いた。

「な、何でしょうか」

「あのさ、ちょっと教えてほしい事があるんだけど」

「はい。何なりとお申し付けください」

うわ。とても他人行儀だな。ま、気にしてもしょうがないか。

「あのさ、この国の王様ってどんな人なんだ?」

「お名前はサラ・ニルフィオーレ。歳は16で、経済関係なのでも民の事を思ってやってくれてます」

説明をしている時でも俺の顔は見ない。ちょっと腹が立ってきた。

「おい、餓鬼。そこを退け」

声的にランクS又は貴族か。標的になった奴、可哀想だな。

「無視とはいい度胸だな」

受付嬢が青い顔をして俺の顔を見ていた。後ろを見ると、大柄な男が俺を見降ろしていた。

「ああ、俺の事か。悪いけど、俺が先に来てたんだ。ちょっとそこに座って待ってて」

俺がそう言うと、男の顔はもっと険しくなった。

「んだと?俺はランクSのルルオト・バイスマンだぞ!」

「あ、奇遇だな。俺もランクSなんだ。お前は竜を倒した事があるか?」

「なんだいきなり。あるぜ」

「どんな竜だよ」

「ワイバーンだ。お前こそあるのか?」

大柄な男は俺を見下し、にやにやと見ていた。俺は大笑いをした。

「あっはっはっは!そんだけで威張ってるなんてな。俺は赤竜帝と白竜帝を倒したんだ。そして今使役している」

「でたらめを言うな!」

「なら実際に見てみるか?」

俺達は外に出て赤竜帝と白竜帝を出した。辺りはどよめき出し、騒然としていた。

「これでも、でたらめと言うのか?」

「俺と勝負しろ。賭けるのはその竜2体だ」

「別にいいが、お前が負けたらどうすんだよ」

「俺が負けるはずないが、そうだな。俺が負けたら全裸でこの国を走り回ってやるよ」

「いいぞ。それで決まりだ」

俺達は剣を構えた。大柄な男は大きな剣を持っている。だが、この剣に斬れない物はない。

「なぁ、受付嬢さん。立会人してくれないか?」

「は、はい。準備はいいですか?よーい、始め!」

そう言った瞬間に男は走って来た。そして俺に剣を当て続けた。俺はそれをどんどん交わしていく。剣が大きい分、重さがある。だから、少し遅く感じるが衝撃は大きい。

「どうした!?反撃しないと、勝てねぇぞ!?」

「面倒だけど、やるか」

俺は後ろに下がり、剣を前に構えた。

「黒鉄抜刀術開伝。玉簾不断ぎょくれんふだん

俺は向かっていき、剣を交わして、剣を当てる前に刃を返し当てた。

「ぐっ!!」

死にはしないが、大きなダメージを追う為気絶するのだ。

「こ、この勝負。黒鉄愁斬の勝利!!」

その声でギャラリーは大騒ぎ。正直、もう目立つのは嫌なんだけどな。

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