第6話 これで2体目か

俺が天界に来てから2日が経った。俺が第一席に座ったので会議が勧められるようだ。なので溜まっていた議案が一気に会議にでた為、昨日はずっと会議室に入り浸っていた。

「疲れた。何で一気にやるんだ。俺は人間だぞ!!」

「お疲れ様です。ずっと溜まっていて今すぐやらなければいけない物が大半だったので。でも、助かりました。あと、これをお使い下さい」

そう言って俺に渡したのは指輪だった。ごく普通の指輪だ。

「これは”天使エンジェル指輪リング”です。これを持っていれば何時何時いつなんどきでも天界にお越しいただけます」

「ありがと。俺、ちょっと寝たいんだけど」

「だったら、私の太ももを使って!!」

そう言って出て来たのはジブリールだった。ジブリールは大の美少年好きで俺にくっ付こうとする。そして嫌いなのが叔父さん。ミカエルもその中の一人に入ってるらしい。

「別にいい。ベットで寝る」

「照れないの!」

そう言って俺を太ももに乗せた。

「照れてない。お前の傍にいると何かされそうで怖いんだよ」

「あら。何もしないわ。疲れている人に嫌がる事はしないのよ、私は」

そう言って俺の頭を撫でていた。何か落ち着く。どうしてだろう、懐かしい気がする。小さい頃、母さんや蒔絵姉さんにやってもらってたっけ。

「もう寝ちゃった」

「寝顔は赤ちゃんみたいだね」

俺が起きるとまだジブリールの太ももの上だった。

「あ、起きたの?」

「ひょっとして俺、ずっと寝てた?」

「いいえ。ほんの10分くらい」

俺は立って、その場を後にした。

「ジブリール」

「何?」

「あ、ありがと」

俺はそう言って走ってその場を後にした。

「も、萌えー!!」


「ミカエル。俺、もう下界に帰りたいんだけど」

「あ、そうでしたね。では、指輪に念じて下さい。それだけでいいですから。会議があり次第、ラファエルが迎えに来るので」

俺はホッとした。

「どうしたんですか?」

「ジブリールが来るのかと思ってな」

「ああ。彼女もそう言ったんですけど、6人全員が却下と言ったのでラファエルになったんですよ」

「そうか。じゃ、またな」

俺は指輪に下界に帰りたいと念じた。すると光の速さで下界に着いた。

「あ、着いた。はえーな」

俺はあっさりと受け止めた。ステータスを見ると日時が全てのっている。今は5時。2日経ったのに全然時間が経っていない。

「天界と下界じゃ時間の流れる速さが違うのか」

俺は取り敢えず眠る事にした。


「……ふぁ」

「よく眠れたか、主よ」

陰の中から話しかけて来たのは赤竜帝だった。

「ああ。すっかり疲れは取れた。じゃ、トゥグバリア王国に行きますか」

俺は立って洞窟から出た。

俺達は愉快に話しながら歩いていた。

「なぁ、お前ってどこの出身なんだ?」

「分からぬ。我はずっと西にある竜の国で生まれた。だから、国とかではない」

「そうか」

それから黙って歩いていると、アイズラビットが冒険者に襲われていた。まあ、ちょっと見て放って置こうと思ったんだけど。

「はっはっは!こいつ、泣いてるぜ?」

「野生のやつは赤い目をしているのにな!」

これは弱い者いじめみたいだ。俺には関係ないが、放っておくこともできない。

「おい、止めてやれよ」

「あ?お前、誰だ」

「俺は黒鉄愁斬。見ての通り、冒険者だ。弱い者いじめみたいな事は止めろと言ったんだ」

俺が一歩近づくと、男達は油断しきった顔で俺を見ていた。そして男の一人が俺に向かって走って来た。俺はそいつを投げ飛ばし、首にかかっていたアイテムの紐を切った。

そして男達は俺の襟に着いている賢者級バッジをみて飛び上がった。

「賢者級バッジ!!」

「俺はな、あの赤竜帝を倒したんだ。お前らなんていつでも殺せる。さっさと居なくなれ」

そう言うとすぐに男達は逃げて行った。

「ったく。お前も、親と離れないようにしろよ。じゃあな」

俺はその場を後にしようとすると。

「待って!!」

俺は後ろを向いた。だが、アイズラビットだけ。

「お前か?」

そう言うとアイズラビットは頷いた。どうやら俺の言葉が分かるらしい。

「助けていただいてありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

そう言うとアイズラビットは手を噛み、血を出した。

また契約か。

「契約って重約してもいいのか?」

「別に大丈夫だ」

俺はその言葉を聞き、アイズラビットの血を舐めた。すると、俺の右手の甲に印が出て来た。

「”我、黒鉄愁斬と契約す。幾年、幾ばかりも汝を主とし忠誠を誓う”」

「俺の名前!」

「主の名前など、モンスターの中ではもう広がっているだろう」

「ですよね」

そう言うと、アイズラビットは俺の影の中に入った。

これで2体目か。ま、悪い気はしないからいっか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る