第5話 こうして俺は天界の第一席の座に座ったのである
俺は驚きのあまり固まってしまった。とても大層な事を聞いてしまった気がする。本日王様に会うのは2度目。そう言えば、あのリーリャント・ベッヘアーゼはどこにいるんだろうか。会う約束はしたが、約束場所を聞いていなかった。
そう考えていると声が聞こえた。
「あら、セリス。男を連れ込んで何やっているの?」
「何だ。リーリャントではないか。別に私が何しようと関係ないだろう?」
俺は聞き覚えのある声に振り向いた。すると、そこにはさっき考えていたリーリャント・ベッヘアーゼが立っていた。
「あなた昨日の」
「ああ。昨日ぶりだな」
リーリャントはセリスティアを一瞬見た。
「もしかして会わなきゃいけない奴って」
「ああ。セリスティアの事だ」
そう言うと、鼻で笑っていた。
「へー。まあ、いいわ。ねぇ、愁斬。私と一緒に本国に来ない?」
「え?」
「何を言っているんだ!?」
「愁斬が良ければ。だけどね」
俺は意地悪な顔をしているリーリャントを見て悟った。こいつはセリスをおちょくっているのだと。
「まあ、それもいい話だな」
「愁斬!!」
「でも、断るよ」
俺は笑顔でそう言った。すると、リーリャントはやっぱりねと言う顔をしていた。
「俺は誰の指図も受けない。自由奔放なんだ。だから、国王命令でも従わない時だってある」
俺はリーリャントの目をまっすぐ見て、そう言った。
「じゃ、俺はもう行く」
「もう聖地を出るのか?」
「まあな。お前らに会う為だけにここに来た訳だし。他に用はないしな」
「じ、じゃあ、門まで送る」
「ああ。サンキュ」
俺達は門まで行き、仮の身分証明書とギルドカードを提示して”
「あの人魔術もできるのね」
「あれは中級魔術。もう少ししたら入れるか」
さて、まずはどこに行こうかな。取り敢えず、武器調達かな。さっき叔父さんが言っていたトゥグバリア王国は武器が豊富だって言っていたな。行くか。
俺はトゥグバリア王国に向けて出発した。
夕暮れになり、俺は洞窟で休むことにした。
「お前が黒鉄愁斬?」
「そうだけど。何」
「俺はラファエル。ま、天使だ。俺達の長がお前をご所望なんだよ。だから黙ってついてこい」
「分かった」
「まあ、そう簡単には……え!?分かったの!?」
「別に死ぬわけじゃないんだろ?だったら別にいいじゃん」
そう言うとラファエルっつー天使はフリーズしたがすぐに我に返った。
「じ、じゃあ、この指輪をつけろ」
「分かった」
俺は渡された指輪をつけた。すると、指輪は光り、俺の足元は白く、天井は金色の知らない世界だった。
「ここが天界か。本で見るよりも結構綺麗じゃん」
「お前、よく落ち着いていられるな」
「ま、順応するのは早い方だし」
「早過ぎだろ」
そんな他愛もない話しをしていると、大きな門があった。
「ここが俺達の会議室。お前、剣を構えとけ」
「何で」
「ちょっとヤバいからだ」
俺は言われた通り剣を構えた。そしてラファエルが開けると女の人が俺に飛び掛かって来た。
「はーっ!」
俺は剣を振りかぶって寸止めをした。
女の人?これのどこが危ないんだ?
「んー!映像で見たときより美少年じゃない!!私はジブリール。よろしくね愁斬きゅん!!」
「は、きゅん?」
「お前、いい加減にしろよ。愁斬が困ってるだろ」
「あ”?この私に喧嘩売ってんのかジジイ」
「お前!」
「まあまあ。申し訳ありません。ここは天界。私はミカエル。よろしくお願いしますね、黒鉄君」
そう言うととても綺麗な顔立ちの金髪のお兄さん?が出て来た。すると2人の矛先はミカエルに変更された。
「いくらミカエルでも容赦しないわよ」
「そうだぜ。俺達の喧嘩に入ってくるたぁいい度胸じゃねぇか」
こいつら本当に天使か?天使は天の使いとして人間界に遣わされ、神の心を人間に、人間の願いを神に伝えるものでやさしくいたわりぶかい人じゃなかったのか?こいつらは優しくないしいたわり深い奴らでもないよな?
「あのさ、本題を話してくれないか?」
俺は頭を抱えながらそう言った。するとジブリールとラファエルは俺をにらんだ。何で俺にまで矛先が回ってくるんだよ。
「お前、俺達の喧嘩を後にして話しを聞こうとしてんのか?」
「そうよ。いくら美少年の君でもやっていいこととやってはいけない事があるわ」
俺は少々カチンと来た。天使が俺を呼んでいると言われてワクワクしながら来てみれば喧嘩に巻き込まれるわ、本題を聞こうとすると睨まれるわ。正直堪忍袋の緒が切れそうだ。
「いい加減にしろ!!」
「え?」
2人は同時に間抜けな声を出した。
「いいから2人ともそこに座れ。今すぐに」
俺は冷めた目で殺気を出して命令した。
「何なんだ。俺はな、天使ってどんな奴か楽しみにしていたんだぞ。なのに天使らしくないし、変態だし、言葉遣い悪いし。イメージがぶち壊しだ!!ま、それはいいとしても、早く本題を話せと言っているのに喧嘩に入って来るな?いつ俺がお前らの喧嘩に入ったって言うんだ!?」
俺は息切れをしながらそう言うと2人は反省していた。
「悪かった」
「ごめんなさい」
俺は息を吸った。
「分かればよろしい」
そう言うとミカエルが拍手をしながら俺に近づいてきた。
「素晴らしいですね。喧嘩していた2人を納めるなんて。私達七大天使の長になるに相応しい逸材です!」
「七大天使の長?俺、人間だぞ」
「知っていますよ。でも、ただの人間ではない。そうじゃないですか?」
「ま、天使なら何でも知ってるか。そうだけど。それが七大天使の何に関係あるんだよ」
「この世界の人間ではないという事は神とも言えるんですよ。でも、この世界には神がいますからね。なので天使にしてしまおうと天使会議で決まったんです。天使会議は七大天使の全員が集まり決める会議。誰にも結果を変える事は出来ない」
「で、俺が天使の長。つまり、第一席に座ると言う事に決定したと」
「はい。丁度第七席にいたイェグディエルさんが引退されたので」
「じゃあ、人間の俺じゃなくて他の天使にすれば?」
「それも出たんですけど、皆まだ新米で」
俺は頭を掻いた。
この会議で決まった事は覆らない。ならやるしかない。
「あのさ、いつもこの天界にいなきゃいけないの?」
「いいえ。会議がある時だけで大丈夫です」
「ま、それだけならいいよ。その代わり、変な仕事押し付けんなよ」
「分かってますって!!」
こうして俺は天界の第一席の座に座ったのである。
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