第3話 勘弁してくれ!!

俺の前には大きな赤色のドラゴンがいた。そして無数の騎士もだ。

「そこの君。冒険者か」

「え」

「手伝ってくれ!あいつを倒す為に!!」

そう言うと男の騎士は俺の腕を掴んで走った。

「騎士団長!この冒険者にも手伝っていただけないでしょうか!?」

俺はテントの中に連れ込まれた。

「冒険者?お前、何級だ」

「あのなぁ」

俺が声を出すと、男は腕を離した。そして思いっきり息を吸い……。

「俺は冒険者じゃねぇー!!」

「へ?」

「だから、俺は冒険者じゃねぇの!あんたが勘違いして連れて来たんだろうけど、俺はまだ登録してないんだ!」

そう言うと連れて来た男はとても落ち込んでいた。

「で、でも、その剣は?」

「これは俺の愛刀、十六夜だ。正直、力が欲しいなら貸してやってもいい。金もいらない。俺は結構強いぜ?」

団長は俺を睨んでいた。だが、決心がついたようで俺に手を差し伸べた。

「協力感謝する」

「どういたしまして」

俺はその竜のいる所に向かった。

「竜の名前は赤竜帝。精霊王フェニックスの眷属だ。だが、悪さをしていてな。私達はその討伐に専念しているのだ」

「悪さね……」

話をしていると目的地に着いた。とても大きな竜だ。

「始めるとすっか。団長さん、これ俺一人でやらせてくれねぇか?」

「何を言っているんだ!?あれは聖騎士が10人懸っても倒せなかったんだぞ!?」

「俺は出来る。言ったろ、俺は結構強いって」

「いいだろう」

「団長!!」

「さんきゅー。じゃ、邪魔だからすっ込んでろよ」

俺は冷たい目でその場にいた騎士を見た。すると、すぐさま居なくなった。

「さてと。俺は黒鉄愁斬。赤竜帝、狩りの時間だぜ?」

「お主、我を倒そうと言うのか?」

俺は驚いてしまった。この世界の竜ってお話しできるんだ。

「へー。お前話せるんだな」

「我は至高の存在だ。愚かな人間とは話したくはない。だが、お前は違う雰囲気がする。何者だ」

「俺は通りすがりの流浪の民ですよ」

俺は剣の鞘を抜いた。そして、剣を向け、走り出した。

「お主と我では全てが違うのだ!」

赤竜帝は空を飛んだ。

「悪いけど、俺も飛べるんだぜ?”飛翔フライ”」

俺は宙に浮いた。そしてどんどん速く加速して行き、赤竜帝の腹に回り込んだ。剣を立て、そのまま維持をしていた。

「そんな事で我が殺せるとでも?」

「お前、さっきから高度が下がってるんだ。相当疲れているんだな。そして、今度の下がったお前の腹に剣が刺され、そのまま俺が動かなくてもお前の重さと速さで自動的に斬れるって訳だ」

そう言うと赤竜帝の腹に剣が刺さり、腹が斬れた。そして赤竜帝は地面に倒れた。

「……お主、何故とどめを刺さぬ」

「俺はお前を倒すとは言っていない。それにあの団長にも雇われていない。つまり、俺は身勝手でここにいんだよ」

俺は治癒で赤竜帝の腹をつないだ。

「だが、お前は逃げた方がいい。もう村を焼き払うのを止めろ。精霊王の意思で在ろうとも」

「はっはっは!お主は面白い。……我の血を飲め」

「は?」

「我と契約せよ。さすれば、お主の契約精霊としてお主に使え精霊王の意思にも背くことができる」

「分かった」

俺は赤竜帝の腕を切って血を飲んだ。すると、左手の甲に印が出て来た。

「これが契約印。”我、黒鉄愁斬と契約す。幾年、幾ばかりも汝を主とし忠誠を誓う”」

「”許す”」

俺がそう言うと契約印は光を失い、赤竜帝は陰に入った。

「おい!一体どういう事だ!?」

「何が?」

俺は何かしたかと言わんばかりの顔で振り返った。

「俺はあんたらに雇われた訳じゃない。勝手に入ったんだ。だから、俺が何しようが関係ない」

俺は団長を一目見て、その場を去ろうとした。すると、団長は俺を止めた。

「君、名前は?」

「俺は黒鉄愁斬。流浪の民だ。あんたとはまた会える気がする」

俺はそう言って木の上に乗った。

俺は元々田舎暮らしで木登りばっかやって来た田舎少年だぜ?木登りくらい、一瞬でできらぁ!

「黒鉄愁斬……」


木の上で昼寝をしていると、下から叫び声が聞こえた。

「きゃー!!」

「た、助けて!!」

俺が横目で見ていると、大きなクマに追いかけられていた。でも、腕は長く凶暴そうな感じだ。

人助けは日本人の常ってな。

「うがー!!」

「きゃー!」

俺は木から飛び降り、剣を通した。そしてそのクマは一瞬にして消えた。クリスタルっぽい物を取り、後ろを向くと怯えた顔の女の子達がいた。

見るからに冒険者だ。

「大丈夫か?」

「あ、はい。助けていただいてありがとうございます」

俺は転んでいた金髪少女を起き上がらせた。

「じゃ、俺はこれで」

「ま、待って下さい!!」

俺を呼び止めたのは茶髪の女の子だった。

「何かお礼を!」

「お礼はクリスタルでいい。じゃあな」

俺は走って木の上に乗った。


しばらく歩くと大きな門が見えた。

「あれが聖地の門か。大きいな」

俺が近づくと、門の女兵が俺を止めた。

「身分証明書を提示して下さい」

「あ、悪い。俺、身分証明書なんて持ってないんだ」

「そうですか。なら少々お待ち下さい」

あっさりそう言うと女性はカードを渡してくれた。

「これは仮の身分証明書です。これを無くしてしまうと出る事も出来なくなってしまうのでお気を付け下さい。尚、ギルドカードも身分証明書になりますので」

そう説明した女兵は通してくれた。後ろではもう一人の女兵が手を振っている。

取り敢えず、冒険者ギルドに行くか。

冒険者ギルドに行くと、いきなり絡まれた。

「おい坊主。ここは餓鬼が来る所じゃねぇんだぞ?」

俺は無視して通り過ぎた。

「この餓鬼!」

剣を振り下ろした男を俺は思いっきり薙ぎ倒した。これぞ一触即発だ!

「悪いけど、俺はあんたらみたいな雑魚を相手にしてる暇はねぇんだよ」

俺は冷たい目と殺気を込めた言葉でそう言った。

俺は振り返り、受付嬢に話しかけた。

「ギルドカードを作ってほしいんだけど」

「はい。では、この水晶に手を置いて下さい」

俺は言われた通り水晶に手を置いた。すると光を帯び、紙が出て来た。

「?これはなんと読むのでしょうか」

「黒鉄愁斬だ。俺は流浪でな」

そう言うと納得した顔になった。だが、すぐに受付嬢は目を見開いた。

「属性の8つを掌握してる。しかもランクS、賢者級だなんて!!」

その賢者級と聞いてその場にいた全員が驚いていた。賢者級は早々いないらしい。

受付嬢は奥に走って行った。しばらくすると、大きな大柄の男が出て来た。

「お前がランクSの男か。俺はこの聖地冒険者ギルドのギルド長をしているロウデン・アシタロスだ。ロウデンでいい。よろしくな」

「俺は黒鉄愁斬。愁斬でいい」

「分かった。ちょっとバッジを持ってくるから奥の客間で待ってろ」

俺は奥にあった部屋に入り、椅子に座った。すると、多数の女性が周りから出てきた。

俺は切りつけてくる物をどんどん交わし、転ばせた。

「どういうつもりだ。ロウデン」

そう言うと扉の奥からロウデンが出て来た。

「なんだ。気付いてたのか」

「この部屋に入る前、浅い呼吸を感じた。多分、この子だろう。それで、ざっと8人いると気付いた」

そう言うとロウデンは大きな声で笑った。

「久しぶりだぜ。こんな奴!!おらよ、賢者級のバッジだ」

「どうも」

「あと、この中からアドバイサーを選ぶといい。と言っても、こいつらはお前に惚れているけどな」

そう言うとさっきの女性達は愁斬の腕や足にひっ付いていた。

「こいつらは強くて顔立ちのいい男に骨抜きなんだ。だから、お前にメロメロなんだよ」

「俺って顔立ちがいいの?」

「まあな」

ロウデンは面白そうに俺を見て笑っていた。


結局、8人がローテーションでやって行くことになった。

「では、私からやらせていただきます。手取り足とり相談に乗りますからね。このリアス・レイルッタが!!」

そう言って俺の腕にひっ付いた。

「そいつ、しばらく腕離さねぇから。気ばれよ!!」

「勘弁してくれー!!」


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