第15話 零れ落ちる涙
「はい」
そう言って、差し出されたマグカップを受け取る。中身は、オレンジジュース。
マナブ、いや学は静かに向かい側に座る。真と学の間には机が置いてある。
真は差し出されたジュースを一口飲み、大きく息を吐く。
マグカップを机に置き、学に向かいあう。
学は、ボーと天井を見上げていた。何を考えているのだろう。
探るように見ていたが、視線が気になったのだろう。
学が如何にも嫌そうに真を見た。
「なに、こっちジッと見て。言いたい事あるなら言えば?」
「んな⁉ なんなんだよ、その態度⁉」
学のあまりの言い方に、怒りがわいた。言葉が次から次へと湧き出てきた。
「言いたい事⁉ 山ほどあるわ! 聞きたい事も‼ けどな、けどな・・‼ わけわかんねーんだよ‼ ここに来て、頭の中ぐちゃぐちゃで。理解したくねー事ばかりで。何なんだよ、ここ。何なんだよ、この世界わ‼」
「・・・・真」
「けど、だけど‼ 学が俺の名前呼んでくれて、俺の事わかってくれて、うれしかった。何か、安心ってか、なんだ・・・これ」
いつの間にか涙が出ていた。頬を伝って手に落ちる。
一度出てしまったもの止める方法を真は知らない。
とめどなく流れてくる涙は、この世界に来て溜まりにたまった感情のようだ。
不安、恐怖、怯え、拒否感、絶望。色々な感情が今、涙になって流れている。
まるですべてをキレイに洗い流してくれるように。
学はそんな真に声をかけるでもなく、ただ黙っていた。
手を伸ばし、垂れ下がっている真の頭の上にポンと手を置き撫でる。
口に出すのではなく、黙って見守る、それが学の優しい所だった。
真は溢れてくる涙を、感情をすべて吐き出すように泣き続けた。
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