第14話 再会

「お前は、誰?」


 そう問われて、なんて答えるのが正しいのだろうか。素直に浅月真と答えた方がいいのだろうか。

 けれど目の前にいるのは、真が知っている学ではない。

 身体が小刻みに震える。身体中から汗が噴き出てくるみたいだ。


 マナブは真っすぐに真を見ていた。

 そんな彼から目をそらせないでいた。もし、そらせば余計怪しく思われる。

 なんて答えるのが妥当なのだろう。

 頭の中には、この場に相応しい答えが出てこなかった。言い訳も出来ない。

 ただただ、恐怖で声が発せれないでいた。


 何秒たったのだろう。いや何分か。

 それくらい、真とマナブは互いから目をそらさないでいた。


 その時、ふと何かが切れる音がした。


「はぁーー、これじゃただの問い詰めみたいじゃん。いや問い詰めてるんだけど。まー、そんなにおびえるないでって」


 頭をガシガシかく素振りを見せながら、マナブはため息をついた。

 何が起きているのかわからなかった。何か言いたいのに、喉に言葉がつまって出てこない。


「まー、この世界に来て1日で状況を理解するのがやっとって感じだったから無理はないけど」


 そう言いながらマナブは話を続ける。


「さすがに、いつもみたいにって方が無理か」

 うん、うんと頷きながら、マナブは真の顔を覗き込んだ。


「おーい、真。聞いてる? 大丈夫?」

 

 目の前でマナブがヒラヒラと手を振る。

 言われた言葉が頭の中で何度もなっている。

 真はマナブに摑みかかる勢いで言葉を発した。


「………え、今、おい。今なんて。ちょっとまて。マナブ今なんて⁉」

「んー、だから、大丈夫かって」


 鼓動が早い。

 真は、手の中に納まっている紙をぎゅっと握った。


「まー、落ち着きなって。手の中にある物見てみなよ」


 そう言われて、手の中に納まっているものを広げる。

 手汗で少し濡れてしまった紙には、2016年夏期講習予定表と書かれていた。

 顔をばっと上げ、マナブを見つめる。


「まー、そういう事。問い詰めてゴメン。俺も、ほんの少しだけ自信がなかったから。えっと、ゴメン、真」


 今度ははっきりと聞こえた。

 聞き間違えではなかった。ちゃんと自分の名前が呼ばれている。


「・・・学」


 ポツリそう呼ぶと、


「ああ」


 小さく、けれどはっきりとした声が届いた。

 

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