第12話 守られた街

 4人は駄菓子屋で買ったものと、ついでに買ったラムネを手に取り、河川敷に向かった。


 (3人が言う〈いつもの所〉って、河川敷だったのか)


 ハジメたちは、河川敷に腰おろした。夕日が辺り一面を茜色に染めている。

 水面は夕日に照らされ、キラキラ光っている。

 ゆったりとした時間が、4人の間に流れていた。


「今日さ、襲われただろ」


 夕日に照らされた水面を見ながら、ハジメは声をかける。


「おい!」と言って、ヒビキがハジメを止めに入った。


「別に良いだろ、誰もいないんだし」

「っで、ハジメ。どうしたの?」


 2人の間に入りながら、マナブはハジメの言葉を促した。

 ハジメは嬉しそうな顔をしながら話始めた。ヒビキはあまりいい顔をしていなかったが。


「今日さ、学校を攻撃されたじゃん。わけのわからない何かに。けどさ、それってなんか変じゃね?」

「どういう事?」


 とマナブは問いかける。


「だってさ、おかしいと思わね?昔から、町の外には決して出るな、町の中は安全だって口を酸っぱくして言われてたけどさ、本当に外の世界は危険なのか? 実際にここ最近、こういう被害が多くなってきてるじゃん。町の中って本当に安全なのか? 誰か、それを確かめたのか。大人は確かに俺たちの事を思って、いつも正しい事を助言してくれる。けど、ここ最近なんか違うと思うんだ。何かが変なんだって。わかんねーけど、なんか違和感ってかなんか変なんだよ。だから俺、自分の目で確かめてみたい。町の外に出てみたいって思うんだけど」


 ハジメが一気にしゃべるので、マコトたちは口をはさめなかった。

 自分の目で確かめたいか。なんともハジメらしい答えだった。

 ハジメが言った事を頭の中で反復しながら水面を見ていると、金切り声が空をきった。


「何バカな事言ってんだ‼ 町の外は危険だ、そう教えられただろ‼ 今すぐその考えはヤメロ、次に言ったらぶっ飛ばすからな‼」


 ヒビキの怒声が辺り一面に鳴り響いた。

 ハジメは、切羽詰まったヒビキの声に思わず怯んでしまう。

 マコトは、なぜヒビキがそんなに怒るのかわからないでいた。

 困惑した表情でヒビキを見ていると、隣からマナブがこそっと教えてくれた。


「ヒビキの母さん、外に出ようとして亡くなってるんだ」


 驚いて、ヒビキの方を見る。亡くなっている。

 現実世界では、確か病気で他界してたはずだ。この世界でも。

 どんな顔をしていいかわからずにいたマコトに対して、ヒビキは明るく振る舞った。


「まー、何年も前の事だしな。取り乱して悪かった」

 

 感情を押し殺した声が辺りを包む。

 ヒビキの中ではまだ、昇華できていないのだろう。彼の表情がそれを物語っていた。


 明るく振舞いながら、ヒビキは買ってきたグミの袋を開ける。

 3人に「いる?」と言って袋を差し出してきたので、3人各々に手を袋に伸ばした。

 グミの味は、あの頃と変わらず懐かしい味がした。


 この世界に来て新たにわかったこと。どうやらここでは、町の外に出てはいけないという事が教えこまれていた。誤って外に出れば、その先は死が待ち受けているのだろう。


 悍ましい考えを断ち切るように、頭をフル。油断すると悪い方向に考えてしまう自分がいて、それがどうしようもなく嫌になった。辺りはこんな綺麗な景色だというのに。




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