第6話 映画

「おーい、ビデオデッキもってきたぞ」


 そういって真はテレビの前にデッキを置いた。

 ビデオデッキはホコリだらけだった。

 機械に強い学が、デッキを容易くつないでいく。

 年代物だけど、どうやら機械自体は動くみたいだ。


 4人は定位置につく。ソファに座るのは、右から一と響。ソファは二人掛けだから、真と学はそれぞれ床に座った。一番テレビに近い学が、ビデオをデッキに入れた。


 リモコンを持っているのは、安定の一だ。

 いつも我勝手に操作して、響に怒られている。


 映像を見るための注意事項が流れ始める。


 一と響は昼ご飯と一緒に買ったお菓子に手を付けていた。


 (懐かしい物買ってんなー)


 真はそう思いながら、画面に目を向けた。

 かくいう自分も、たまたま見つけたある物を懐かしさのあまり手に取り、いつの間にか会計を済ませてた。


 学も、コンビニの袋に手を伸ばしている。

 そう言えば、学も懐かしい物買ってたんだっけ。


 映画が始まるまで後少し。3人が偶然見たことがある映画。

 どんな内容なのか。

 なぜか、楽しみにしている自分がここにいる。

 始まる、そう思ったその瞬間。


 目の前の光景が歪んだ。


 目が回った。

 天と地が反対になっているような。

 足が地についているのかわからない。

 身体から、力が抜け落ちる。

 意識が薄れていく。

 目の前が真っ暗になっていく。


 真は、必死に意識を保って3人に助けを求めた。

 3人とも同じだった。


 一はすでにぐったり横たわり、響は頭を抱え倒れた。

 学は辛うじて意識がまだあるようで、転がっているリモコンに手を伸ばそうとしている。

 けれど、伸ばした手は力なく床に落ちてしまった。


 視界は暗くなるばかり。

 目に写つるのは、流れる映画の映像。


 それが、最後に見た光景だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る