第4話 寄り道

「真の家行く前になんか買っていかね? 丁度昼飯時だし、腹減ったわ」


 いちは歩きながら、自分のお腹を抑えていた。


「賛成ー。暑いし、お腹減った。涼しい所行きたいわ~」


 一の意見に響も同意するように足早に歩く。


 確かにこの暑さだ。今は、夏真っ只中。ほんの少し歩くだけで、吹き出るくらいに汗が垂れてしまう。

 どこかと思った所、コンビニが目に入った。

 どうやら他の3人も気づいたらしい。


「コンビニいかない? すぐそこにあるし」


 俺の言葉に「うん、賛成」とか言う前に、3人はコンビニに向かって既に歩き出していた。その光景はまさに、おいしい匂いに誘われて入ってみようかなと思う時のようだ。


 それが今の状況では、コンビニは美味しい物が手に入るのと同時に涼しいという条件がそろっている。今まさに、真たちが求めている条件にピッタリとあてはまっていた。やれやれと思いながら、3人に後を追う。


 一通り、コンビニで涼み昼食とそれぞれちょっとしたお菓子を買って外に出た。夏の暑さが容赦なく照り付けてくる。


「早いところ、しんの家に行くか」


 普段は自分からそんな事言わないがくが珍しい。

 よっぽど早く涼みたいのだろう。


 そう思い歩き出そうとしていた時だった。


「ちょっと待て。あそこ寄ってかね?」


 右足が一歩出かけていた。

 後ろを振り返り、声のした主の方を見る。


「一なんだよ。さっさと行こうぜ。暑いし、なんか買い忘れたものあるのか?」


 響がウザったそうに声をかける。

 学も足を止めて振り向いていたが、あたかも面倒臭そうな顔をしていた。今にも「俺先に行ってるわ」という声が聞こえてきそうだ。


「いや買い忘れたものはないけど、あれ」


 一が首を動かしながらある店をさした。

 3人は、いちが首でさした方を見てみる。


 古本屋のようだった。


 なぜ古本屋に行こうなどと言ったのか不思議だった。というか、こんなところに古本屋があったなんて知らなかった。


 普段通学路としてこの道は通ってはいるが、見たことなかった。コンビニがあるのは知っていたが。目新しいコンビニの建物と比べて、古本屋の外見は少し年季が入っている。


「せっかくだし見てこうぜ。DVDとかおいてあるかもだし。ただ真の家行って予定立てるだけじゃ暇になると思うし」


「それもそうか」


 2人は古本屋の方へ足を進めた。

 俺は3人が向かった古本屋を眺めていた。


「ボロい」


 口から出た言葉はそれだけだった。

 すでに俺以外の3人は中に入ろうとしている。

 暑さ凌ぎにはなるだろう、そう思い俺も古本屋に足を進めた。

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