第2話 終業式
学校は、家とは違い涼しい所ではない。
よりによって、窓際の席。
クーラーをきかせているため窓は閉めっ放し。
カーテンで日光を遮っているが、少しの日の光が入ってくるだけで暑い。
そして、この生徒の数。
人の体温で上がる室内は、もはやクーラーの意味がないくらいだ。
せめて設定温度を下げてほしい。
下敷きを団扇代わりにして仰いでいた方がよっぽど涼しいんじゃないか。
それが、生ぬるい空気だとしても。
そう思っていると担任が教室の中に入ってきた。
少し説明した後、体育館に移動。
お決まりの終業式の時間が始まる。
長々と校長先生の話を聞いているのが、ものすごくだるかった。
体育館はいくら広いからといっても、全校生徒何百人が集まれる場所だ。人口密度が高いという事は、自然と湿度が上がる。そして体育館内に流れてくるのは、外からの風だけ。
(暑い ……)
うちわ代りの下敷きも今は使用禁止だ。
外で鳴く蝉の声を聞きながら、俺は早くこの時間が過ぎ去るのを待つだけだった。
教室に戻り、お決まりの夏休みの諸注意を聞き終業式は終わった。教室中は、夏休みの話題で持ち切りだった。
「どこに行く? いつ空いている? 勉強の息抜きに花火とかプールも行きたいよねー」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
「さぁーて、俺たちの夏休みが今まさにこの瞬間から始まった! 待ってたぜ、俺の夏! この日をどれだけ待っていたか‼」
そういって、俺が座っている席の真正面を陣取り、両手を大きく横に広げ大げさに言っているのが、
陽気な性格で、所謂ムードメーカーというやつだ。
突拍子もない事をたまに言うのが、少し残念な部分でもある。
「
「なんだ、響! その後を言え! 途中で言葉止めんな‼」
「え、言ってもいいの? そっかー、言ってもいいのかー」
「・・・いや、やっぱいい。言わなくてもお前の顔から何となく分かるから」
「えー、残念。俺の夏とか正直、うわぁー何言ってんだこいつ、はずいわーとか思ってたけど言わなくていいんだね」
「いってんじゃねーか‼」
よく
響に言わすといつものことらしい。
「まーた始まった。
だるそうに机に頬杖を突きながら、目の前にいる2人を呆れ顔で見ているのが
手を抜くところは抜いてと、とにかく何でも器用にこなしている。
いいやつ1人、2人、3人。
こいつらと過ごす時間は悪くない。
バカやって過ごす毎日が心地良くて好きだ。
そんなことをボーと考えていると、怪訝な顔をした一が話しかけてくる。
「おい、真! そんな顔で俺たちを見るのはやめろ。あたかも、こいつらくだらない会話してるなーって顔で見てるやめて‼ わかってはいるけど、そう顔に出されると切なくなる‼」
「へぇー、気づいてたんだ」
(
「やっぱりそうかよ! ふざけんなよー、お前もこっち側に来いよ!ってかこっち側の人間だろ‼」
「そうだ! 真もだけど
「え、だって
そう言われればそうだ。
「
悲しそうな顔をしてこっちをみてくる。
そんな顔をしなくても。
「ほんとだよな‼ 真‼ お父さんたちはお前をそんな子供に育てた覚えはありません!」
一の意見に同意した響が言葉を続ける。
いよいよ2人のしょうもないコントが始まり、俺は言い返すのをやめた。
もう底辺な会話にしか聞こえてこなかったからだ。
颯爽と夏休みの課題プリントに目を戻していた。
これが4人の共通点だったりもする。
高校入学してすぐの事。担任が生徒の名前を読み上げていった時、俺の事を
こういう事は小・中を経験してきて慣れていた。ほぼほぼ初めましての人は、名前を間違える。これがいつもの事だった。
毎回毎回、同じことの繰り返しで嫌気がさしてくるが、両親にもらった大事な名なのでそうも言ってられない。そんなこと考えていた時だった。
同じような経験をしている人が3人もいた。
2度ある事は3度あるとは、まさにこういうことだ。
担任も「
最後に
担任もさすがに身構えてしまったのだろう。3度ある事は4度あるかもと。
恐る恐る担任が、「
一回は間違えらえる名前、そんな事があり自然と一緒にいるようになった。名前が運んできた出会いであり、幸か不幸か今もこうして一緒にいるのだ
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