47話 再会 08

暫くして、ケリーはアルミ製のテーブルに頭を擦りつける様に下げながら平謝りしている。


「本当にすみませんでした!黙っていて」


ケリーはソフィーから自分の素性を既に聞かされていたと思っていたらしい。言わなくとも良いことを言ってしまった事に気付いたようだ。

顔を真っ赤にしながら謝り始めたのだった。


「自分は、あの時、仮入隊の隊員の評価を、リアム分隊長に、報告していたんです」


姿勢を戻しても猫背状態になっているのは申し訳ない気持ちの表れだろう。そして実際に声の調子にもそんな気持ちが大いに表れている。


「まぁ、騎士団の方針に、今更こっちがどうこう言うつもりは無いんだが、あの店で会えたのは偶然なのか?」


核心をつく一言、オリバーはケリーをじっと見つめる。


「は、はい、あの店で会えたのは、偶然です。自分は人探しを分隊長に、その、命令されていまして、見つけるまでは、帰って来るな、と」


話す度に縮こまって行くケリー。

騎士団に、いや、まだ正式なモンじゃなかったけど。そんな仕事ってアリなのか?たが、しかし、うーむ、嘘はついてはなさそうだが、でも全部は話してない、よな。ケリーよ、隠し事のできない可愛ヤツめ。

チラッと、横目でみるとソフィーは我関せず、ひたすらホットミルクをチロチロとなめている。


「まぁ、いいや、本当、急ぎの用じゃなかったらもう一つ付き合えよ。今日はちょっとしたパーティーやるんだ」


ケリーもソフィーも此方に悪意は持ってないし、何かしらの害意も無いだろう。ならばもう少し踏み込んでもいいよな。

それに、もうひと押しすれば全部を話してくれそうでもあるしな。

そんな確信がオリバーにはあった。


「えっと、よろしんで、しょうか?」


ケリーはオリバーとソフィーを交互に見てから、尋ねて来る。


「うん、いいのでは無いか、チェイスも喜ぶだろう」


「じゃ、決まりだな。よし、もう少ししたら迎えに行くとしますか」


「そう言えば、チェイスさんは今日はどちらに?」


ケリーの問いに対し、オリバーはどう返事したものか、と一瞬悩んだ。

ふむ、一応ケリーがこの情報にどんな反応を示すかを見て置いても良いよな。ほんとチェイス、悪りぃ。

頭の中で『ここはしかたねーべ』と相方に謝り?ながら話す事にした。


「ああ、今日はギルドでカウンセリングを受けてんだよ」


「え、それってまさか」


ケリーは『カウンセリング』、この言葉に強く反応する。

お、本当に驚いてるな。

あの資料にはしっかりと記されていた情報を、本当に全くもって何も知らないって言う感じのケリーの反応。そして、チェイスを心配する態度も心からのモノであると理解できる。

そして前情報がなくともケリーは察しの良い方だ。オリバーの簡単な返答で今現在チェイスの陥っている問題を理解した様だ。


幻影ファントム、なんですか?」


「まぁな、でも、それも込みであいつは勇士ブレイブマンになる事を選んでるからな。心配はいらねーよ」


「そう、ですよね。それに、幻影ファントムなら、むしろ早めに見つかって良かったとも言えるかも知れませんしね」


それはそうなんだが、実際はもう少しややこしい事になってるんだよなぁ。

しかし、は誰にも言うことは出来ない。

勿論、ソフィーにも。

本当、良い結果が出ると良いんだがなぁ。

ケリーの笑顔に少し良心の呵責を感じたオリバーだった。


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