44話 再会 05
無事に取り引き?が成立した。
ソフィーは封書から書類の束を取り出し、チェイスとオリバーにそれぞれ手渡して行く。
俺とオリバーは二束に分けられた資料を概観して行く。
「なんてこった!」
書類の一部を手にしたオリバーは叫ぶ。
「どうした!何か気になる情報を見つけたのか!」
ただ事では無いその剣幕にチェイスは何事かと身を乗り出すが。
「俺の方の資料、情報的に薄く無いか?これ?」
目立ちたがりのオリバーとしては、ある意味自分の評価が気になるのは当然なのかもではあるが実際時を選んで欲しい。
「・・・黙って読め」
「お、おぅ」
オリバーはチェイスのドスの効いた台詞に従い、口をへの字に曲げながらも黙って資料に目を通し始める。
数分後、二人は自分の資料を読み終え、互いにその資料を交換して確認し合う。
「ん、どうだ?男爵の浅ましさと言うか、セコさを見て取れるだろう?」
それまでじっと大人しく座り込んでいたソフィーはここぞとばかりに問いかけて来た。心なしシッポが元気良くフリフリしているのは退屈な待ち時間が終わった事に歓喜している様にも見えた。微笑ましい仕草にニコリとしたいところではあるが、しかしソフィーの意見には同意しかねる。
「ん、ん〜、どうだろう、確かによく調べられているよ、俺たちが此処に戻っきてる理由もしっかり記されてる、でも、これで男爵の浅ましさがどうかって聞かれるとなると、な」
記録の詳細は細部に至ってはいるものの表題にあった通り近況報告の域を出ているわけでもなく。男爵の狙いを知ることは出来ない。
俺は手にした資料を机に置きながら腕を組み天井を仰ぎ見る。
椅子の方がギシギシ嫌な音を立てているが気にしない。
「そうだなぁ、この件に関しては俺もチェイスに同感だな、ま、もともと俺たち自身に調べられてやましい事は何もないからな、どっちにしろ大した問題は無いっちゃあそれまでなんだけどな」
「うん?そんな筈は無いぞ!」
間髪入れずソフィーは身を乗り出し机に置かれた資料を取り上げる。
その実オリバーにはやましい秘密でもあったのだろうか?
チェイスの視線がオリバーに突き刺さる。オリバーはオリバーでそんなバカなと言った顔で両手を広げて無実を訴えているが、果たして。
「ん、おお!」
一通り資料をめくるとポンッと手を叩きソフィーは何やら得心したご様子。
彼女は殆ど万歳の姿勢に固まっていたオリバーを完全に無視して椅子から飛び降りると再び自分の皮袋にかじりつく。
「うんうん、交渉の道具に使おうと思って別の方に退けといたんだった」
正直なところソフィーのその独り言の方が気になって仕方がないチェイスだが、今は突っ込まない事にした。
ソフィーは皮袋から一枚の紙片を取り出してくるとテーブルにそっと差し出す。
どれどれと覗き込むチェイスとオリバーは文字通り硬直した後、叫んだ。
「「賞金5000万ルビ、だと⁈」」
意図した訳ではなかったがチェイスとオリバーは再びハモってしまった。
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