42話 再会 03
「がっはっははははは、それにしてもよく俺ん家がわかったなぁ、ソフィーちゃん」
正気を取り戻したオリバーはソフィーの隣に腰掛けながら豪快に笑う。
さっきまでの失態を誤魔化しにかかっているのか?オリバー。
ソフィーと二人してジト目でオリバーを眺めるが本人は全く意に介す素振りは見せない。
が、しかしオリバーの疑問?ももっともだ。
どうやってここまでたどり着いた?
ここは衛星都市の外壁近くとはいえ内側の区画、親父が生きていた時とは違う。今では個人情報はしっかりと守られているはずだ。そしてここは元来『そういう場所』なのだ。
俺の視線に気がついたソフィー は、ふふん、と笑顔を見せ語り出す。
「まぁ、オリバーはともかく、チェイス、お前は世間からそれなりに注目される存在になった、という事だ。」
「?」
俺だけでなくオリバーの頭にもそんなマークが見えた気がした。
ソフィーはやれやれと腕を振りピョコンっと椅子から降りたかと思えば、自分の皮袋から開封された封書らしき物を取り出してきた。そこから一枚の紙を抜き出しテーブルにそっと置く。
「取り敢えずシャワーと朝食分のお礼だ」
封書を抱きしめながらニンマリと笑顔を見せるその仕草は悪戯っ子のそれだ。
なかなか勿体つけてくれる。
オリバー的にはソフィーのシャワー発言に動揺を隠せず「シャ、シャワーだと?」と俺に睨みを利かせるがそんな事はどうでもいい。
『チェイス・及びオリバー・両名に関する近況報告書』
書類の見出しにはそうあった。写真付きの報告書、その写真は明らかに隠し撮りらしくあらゆる角度から見られ、撮影されていた事を表している。
見覚えのあるカウンターに寄りかかり受け付け嬢に話しかけているオリバーの写真、ナンパが失敗し思いっきり引っ叩かれている時の決定的な瞬間も捉えられていた。
普段なら笑いどころのシーンだが、流石に今回ばかりはチェイスの背筋に冷たい物が走った。
これは、城塞都市のギルド会館か?だとすると二、三週間前から監視されている?
「おいおい!こりゃあ注目っていうより完全にストーキングだろ!ソフィーちゃん、一体これをどこで手に入れたんだ?」
流石のオリバーもこれがただ事ではないことに気づいた様だ。声色に焦りが見える。
「ハーディー男爵の屋敷で拾った」
事もなげにハッキリと言い切るソフィー。
「「ハーディー男爵の屋敷で拾ったぁ!?」」
チェイスとオリバーの台詞が見事にハモった。
屋敷で拾ったと言い切れるソフィーの感性というか何というか、猫族だけにネコババはアリなのか?いや、今はそれよりもハーディー男爵の件か。
ハーディー男爵、チェイス達が先の戦いで臨時加入した騎士団のボスであり、そしてソフィーが先日追い出されたらしい騎士団のボスでもある。
「・・・俺たちが騎士団の誘いを無下に断ったから逆恨みしている、って事はない・・・よなぁ?」
「あ、ああ」
しかし、貴族様ともあろう者が一勇士の、しかも新人の一挙一動が気になって監視を着けるとも思えない。ましてやハーディー男爵は生粋の守銭奴だと聴いている。
こんな事に金を浪費するモノだろうか?
何かが身の回りで起きようとしている。
チェイスにはそんな予感めいたものがあった。
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