36話 挑戦者 02
武闘台に大きな穴が開く、その暗闇の中からせり上がる人影は否応なしにこの場にいる観客全ての視線を釘付けにする。
「で、デカイな」
オリバーの感想は実に単純であった。しかしその場にいた誰もが同じ感想を抱いたに違いない。
見え始めた頭から上半身だけでも進行役のそれと比べるべくも無い、体格が明らかに違う。
マントを身に纏い片足を地につけ頭をたれる姿はさながら
しかしマントからは垣間見える姿は返り血が固まった様な赤で染められた
「清廉潔白な
「いやいや、アレは魔王に仕える
成る程、確かにそうだオリバーの指摘は的をついている。それに
「まぁ今回は
チェイスは手槍を担ぐジェ・ロイを見つめる。
「アイツは賞金稼ぎの
「そう捉えるなら今日はなかなか興味深いメンバーが出揃ったじゃないか、あのドルフは差し詰め魔人退治に馳せ参じた
「見方によれば
ジョシュアの
依然、仕草は
迫り上がる武闘台の床がガシャンッと固定される音が重く響く。
「私は今、はっきりと皆様に申し上げる事ができます!この男こそ長きに渡るモエルバッハ
進行役は声を張り上げ場を盛り上げる。そして観客はそれに答え応じるかの様に歓声を上げ始めた。
「では改めてご紹介致しましょう!モエルバッハ、最強の
進行役の掛け声でゆっくりと巨人が立ち上がっていく。
「・・・まじか?」
「おいおい」
チェイスもオリバーも思わず呻きの様な声を出してしまう。
「角を抜いても、三メートル、ある、か?」
「あ、ああ、そうだな、進行役のおっさんが子供に見えるのが、いろんな意味で嫌だ」
子供と評された脂ギッシュな進行役はランクアップ戦のルールを説明していく。
「・・・以上、
手に汗どころか、トガからはみ出ている身体全部を脂汗でテカらせている進行役は、いかにも芝居掛かった仕草で手を振り広げ開始の挨拶を終える。進行役は頭を下げると足下の床が下降を始め彼は武闘台からゆっくりと姿を消していった。
数千人は居るであろう観客達は息を呑んで今か今かとその時を待つ。
『スリーカウントダウン、スタート!』
アナウンスに合わせ、宙に浮かぶ巨大スクリーンに3の数字が表れる。
「スリー」
「ツー」
「ワン」
「ファイッ!」
ドゥゥンッ!ドゥゥンッ!と戦闘開始の銅鑼が鳴り響く。
ヴァルヴァロは勢いよくマントを投げ捨て、背中のこれまた巨大なバトルアックスを手にして身構える。
当然、
初顔合わせで
チェイスは思う。
こういった試合形式の場合、
しかし、無慈悲に響いた銅鑼の音はすでに止み、代わりに観客の声援が木霊する。
ヴァルキリュアの加護を受けた者たちの闘いが始まった。
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