第31話 決戦6
轟く轟音と爆風、衝撃波を身に受け片膝をつき身を屈めるオリバー、正面からドシンッドシンッ、と何かとてつもない重さの物体が跳ね回りながらやって来る。ドカンッ!と真横を通り過ぎた物は
「い、生きてる」
色々な意味で命拾いをした彼は一息つきながらも己の生を再確認した。
どうやら先程目の当たりにした光景は夢でも幻覚でもなかった様だ。
つまり
ケリーの矢ではない。彼の連射技能も大したモノではあるが
「ご本人がこれじゃあ無理だよな」
そこへ前方からガラガラと瓦礫の崩れる音が響く、3体の
レイショウとラッセンが相手をしていたヤツらは近くに倒れ伏している2人にトドメを刺そうとフラフラと近づいて行く。
ヤバイ!だが足に力が入らない。
「ケリー、行けるか?」
注意をこちらに逸らすにはケリーの協力が必要だ。
しかし、ケリーの返事を待つまでも無く。
あの頂上から当てられるものなのか?いや、出来そうなヤツがたった1人いる!
「まさか、辺境伯に仕えてるって噂のサイクロプスか!」
チェイスが朝方に遭遇したと言っていたが、その神業を堪能する時が来ようとは!
呆気にとられているうちに残り2体の
「は、ははっ凄え!」
ミッション終了、全てが終わった!なんか手柄を横取りされた様な気もほんの少しはしないでもないが、生き残れればもうどうでも良い。
「オリバーさん!チェイスさんが、チェイスさんが大変です!」
ケリーの切羽詰まった呼び掛けにオリバーは我を取り戻す。
チェイス!大事な相棒の事を完全に失念していた。
オリバーは弛緩しそうになっていた身体に再度喝を入れチェイスを捜す。そして彼らはそこに居た。
あそこでチェイスは、彼らはまだ戦っていた。
砂塵が舞い上がる中、角付きとチェイスはせめぎ合いを続けている。
「チェイス!離れろっ!囮は、もういいんだ!」
インカムをオンにしながら叫ぶが反応がない。
「インカムは、壊れてるみたいです。さっきから、叫んでるですけど、全然、全然、反応が無いんです!」
くっ、舌打ちしオリバーはチェイスの援護に向かおうとするがケリーが彼の腕を掴む。
「近づいてはダメです!」
何故止める!と文句を言う前にケリーの剣幕に押しとどめられた。
「チェイスさんに今、近づくことは危険なんです。」
まるで自分自身に言い聞かせる様に繰り返すケリー。
コイツは人一倍仲間を思いやるタイプの人間だ。
それがチェイスに近づくな、だと?一体なんだって言うんだ!
少し離れた場所で剣を振るうチェイスを正面に見据える。
「あいつ、笑ってやがるのか?」
チェイスは笑っていた。しかし普通の笑顔では無い事は誰の目にも明らかだった。
それは狂気に基づいたモノ。
常軌を逸するモノがあった。
そして実際に普通では考えられない力に取り憑かれているとしか思えない、強靭な力を見せつけている。
角付きの触手にひるむ事なく立ち向かい。斬り伏せ、薙ぎ払い、その身には鞭打の連続攻撃を受け止めているではないか。肉を切らして骨を断つ、そんな言葉が生易しく感じる程に凄惨な攻め。
そんなチェイスの背後に剣を振りかざし近付く
これは間に合わない!
オリバーはそれでも援護に向かうべく、動こうとしたが出来なかった。
俺は何にビビってやがる!
今まさに、
しかし、一瞬、まさに一瞬の内に
「あ、あの前にサル型が何匹も飛びかかって行くのを見ましたが全部、全部切り刻まれてしまいました。今、チェイスさんは普通じゃあありません」
ケリーは
斬った本人は依然眼前の角付きしか見えていない様だが、オリバーでも迂闊に近付こうものなら同じ様に斬って捨てられていたかもしれない。
いや、十中八九斬られていたな。
オリバーの頬に冷たい汗が流れた。
「チェイスさんは一種のトランス状態に入ってます。しかもこれは・・・危険な方です」
ケリーは震える声で分析する。
「弓矢で何とか援護する事も出来ないのか?」
チェイスの目の前にいる角付きを排除出来ればあるいは、と考えるがケリーは頭を振る。
「僕の力ではあの
悔しそうに岩壁の方を見るケリー、だが手が出せないという点でオリバーも同様。握る
「チェイス!!」
オリバーの声は悲痛な程響き渡るが剣の舞は途切れる事なく続く様に見えた。
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