第28話 決戦3

ここにきて人型の動きがかなり早い。

フェビリの眼前に早くも陣取り、迎え撃つ体勢が出来上がっている。


「ふんっ!」


大刀グレートソードを大きく振りかぶり薙ぎ払う。それだけで眼前に立ち塞がった人型タイプH二体を叩き切ってしまった。意外とフェビリはパワーファイターだった様だ。その豪快な一撃は味方の志気を少なからず向上させた。相手が只の人ならば恐れを抱かせよう一撃だったのだが、そこは感情を持たない機獣メタルビーストだ。仲間がどんな倒され方をしようがお構いなく距離を詰めて来る。

中でも二刀流を決める一体の人型タイプHがフェビリに斬りかかる。

アイツだけ動きが段違いだ!

ケリーとエスタバサ、二人の射手をガードしつつ前進していたチェイス。依然として蜘蛛型タイプSのガードは硬い、三体の球根型タイプDが鉄壁の守りを展開しているからだ。

そんな中一際巨大な本体を持つ一体の球根型タイプDが複数の人型タイプHを引き連れて移動を開始する。第三部隊の隊員が二人、その動きに合わせて行動しようとするが敵の人型タイプHもさることながら彼らの行く手を阻む。

こちらに迫り来る球根型タイプDは彼らを躱し距離を縮める。

二刀を巧みに操る人型タイプHと戦うフェビリ、三体で壁をつくり隊員二人を足止めする人型タイプH

見事に前衛組が押さえられてしまった。

球根型タイプDの恐らくは射手狙い。


「オリバー、張り付くぞ!」


「おうっ!」


迫り来る球根型タイプDに猛然と突っ込みを掛ける。

近づいて初めて理解する。

こいつ、デカイすぎたろ!

通常サイズの球根型タイプDと比較しても横幅は1.5倍は違う、まるでニンニクの塊だ。しかも、距離を詰めて行くに従い、本体上方から大きな筒が4本、生えてくるでは無いか。


「あれでニードルガンを撃つつもりじゃあ無いだろうな!シャレになんねぇぞ!」


オリバーが叫ぶ。蜘蛛の大砲レールガンよりは小さい。とはいえ通常の球根型タイプDが使うニードルガンの銃口よりは遥かに大きい。

打ち出される物が鋼の杭であるならば直撃を受けたが最後、自分たちの身体は地面に縫い付けられてしまう事は想像に難くない。

しかし、今、この足を止める訳には行かない。

むしろ足元に辿り着ければ活路は見えるはず!

人型が一体、そうはさせじと進路を阻んで来るが、チェイスは居合いの要領で瞬時にそれを一刀両断に切り捨てた。

角付きの球根型タイプDは触手をうねらせながら立ち止まる。真正面から突っ込むつもりは毛頭無い、触手の動きを誘導しながら右手に向かう。オリバーはすかさず左手方向へ。

位置どりは完璧に入った。

そう確信したその時、ボゥンッ、ボゥンッ、ボゥンッ、ボゥンッ角付きの頭上辺りから爆音が鳴り響く。

チェイスもオリバーも思わず周囲を見渡す。しかしその砲撃によって負傷した者は勿論、辺りには破壊の痕跡は全く見当たらない。

もしや!

後ろを振り返るとケリーやエスタバサが驚きの表情で上空を見上げている。

なんだ?ヤツは何か飛ばした?・・・いや、打ち上げたのか!

チェイスの頭の中に件の新型の機獣メタルビーストの姿が浮かぶ。


「上だ!上に気を付けろ!」


反射的に叫ぶ。角付きから身を離し空を見上げると。サル型が空にいた。円を描く様に宙に舞っている。


「あれは、風に乗って滑空しているのか?」


観察するとサル型の腕と脚部の間に薄い膜の様な物が張られている。滑空状態のヤツらはサルよりもムササビに似ているかも知れない。


「何だよアレは!あの滞空時間、シャレになんねぇぞ!」


オリバーも叫ぶ、確かに頭上をあんな物に取られた状態ではオチオチ戦闘なんて出来やしない。そして言っているそばから三体のサル型が急降下を始める。狙いはケリーか!


「ケリー!」


ケリーは弓を構えながら軽く後方へ跳びのく、そして一発、二発、三発と襲いかかってくるサル型を全て撃ち落としてしまった。

加速状態の敵によく当てる。

ケリーの腕前には舌を巻くが護衛役としてはやはりもどかしい。


「きゃあっ!」


人が倒れる物音とエスタバサの悲鳴が聞こえた。

しまったと思う暇もなかった。倒れたエスタバサの上に突き刺さったのは銀光を放つの槍の様な形に変化しているサル型。

偵察の時にチェイスを襲ったサル型も同じ形状をしていた。

あの時は木の上から落下して来た物とばかり思っていたが、完全に読みを外された!

そして倒れた彼女の側には、その足元にもう一匹のサル型。エスタバサの足を払ったのは恐らくアイツだ。

非力な腕に思えたソレも不意打ちならアリだ。

憎々しげに角付きとサル型を見る。しかも上空にはまだ四匹のサル型が滑空している。だがこの角付きを放置して置くと何時追加のサルを打ち上げて来るかも知れない。


「放っておく事なんて出来ないよな」


チェイスは覚悟を決めた。

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