第23話 合流

ささやかな休憩の後、引き続き四人は南方にゆったりと下る谷間を行く。岩石の間からいつ機獣メタルビーストが襲い掛かってきてもおかしくは無い。

森と岩壁の間は平均30~50メートルといったところ。見通しの悪い場所を警戒しながら大小の岩石を登ったり避けたりと前進するだけでもなかなか手間がかかる。

先頭はオリバーがそのままで歩く、索敵のためにソフィーが二番手、ケリー、チェイスと続く。

そして、ソフィーはとうとう警告を発する。


「ん、下の方から血の匂い、する」


「よし、少しペースを上げようか!待ち伏せに気を付けろよ!」


オリバーは指示を出すと身を乗り出し、自らは近くの大きめの岩石の上に立ち周囲を見渡す。


「一人、機獣メタルビーストに襲われてるな人型タイプH二機だ。俺が突入するからケリー、フォロー頼む!」


なかなか判断が早い。

チェイスも前面に素早く移動し、さらに機獣メタルビーストがいないか確認する。

オリバーは、今まさに機獣メタルビーストが斬り伏せようとしている相手を見た。ハンプトン村でしつこく絡んできたエスだ。エスは腰に力が入らないのか這いずり回りながらも器用に機獣メタルビーストの槍や剣を躱している。しかしやはり余裕は無いのだろう目に涙を浮かべ必死の形相を見せて居た。


「たくっ、チェイスにあんなこと言っといて、お前が『むせび泣いて』どうすんだよ!」


オリバーの突進に人型タイプHも流石に気付いた様だ。

槍を持った人型が立ち塞がる。しかし、カシュッ、ヤツの左目に一本の矢が突き刺さる。ケリーの援護射撃。


「おっしゃああああああ!」


雄叫びを上げながらバスターソードを右から左へと一閃。

槍持ちの人型タイプHは首を失い。岩に激突。

それを見た剣を持つ人型タイプHもオリバーに襲いかかる。

しかして、その人型タイプHに彼の動きを捉えることが出来たであろうか?気が付いた時にはヤツのコアにバスターソードを深々と突き刺すオリバーがいた。

あいつの動きはやっぱり師匠に似ているな。

チェイスは少しオリバーが羨ましく思う。

落ち着いた所で改めてへたり込んでいるエスに近づく。


「へ、へへ、へ、た、たすかったぜぇ、流石、俺が見込んだ二人だぜぇ」


こんな状況でも上から目線で物が言えるのも大したものだ。チェイスとオリバーはやれやれと嘆息する。


「お一人、だけですか?他の方はどうされたんですか?」


件のゼリー飲料を手渡しつつケリーは質問する。ありがてぇとエスはひったくる様に受け取ると一気に飲み干してしまった。


「相方のおっさんや隊のみんなはどうしたんだよ?」


オリバーは再び質問した。語調に苛立ちが混ざっているのは仕方が無いだろう。


「お、俺たちの隊は森を抜けて作戦通りこの谷間を北上しようとしてた。ああ、直ぐに機獣メタルビーストと出くわしたさ。この俺が七、八機の人型タイプHをぶっ倒してやった時、ヤツらが現れたんだ」


「サル型、か?」


果たして、七、八機を倒せる腕がこの男に実際にあるのかは非常に怪しいところだが、ここはスルーして置くに限る。ここまで来て新型の機獣メタルビーストと遭遇していない事にチェイスは気になっていたのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る