第18話 ターゲット3

「偵察の時は奥まで進めなかったが、実際のところあのまま進めばどんな場所に行けたんだ?ケリー」


オリバーが尋ねる。


「そうですね、正面に岩壁、北側から南側へ少し下り坂が続く感じでしょうか。襲われた狩人は岩壁を目指していた様ですが、その途中であの機獣メタルビーストに襲われた様ですね」


「じゃあ、俺たちはしっかりと奥まで行って、狩人たちの仇をうたないとな!」


いつでも突撃出来るよう、既にオリバーの指先は剣のグリップに触れている。


時間的な関係もあるのかも知れない。昨日より射し込む太陽の光が明るく、生い茂った森林の中でも見通しはいい方だろう。前衛の勇士ブレイブマン以外の位置どりはしっかりと把握できる。

リリアリスの後方、およそ十数メートルの距離を保ち、オリバーはそのまま前進を続けている。

昨日の交戦ポイントは、もう目の前、いや、正確には前衛の隊は既にそのラインを越えている筈だ。しかし、いまだ機獣メタルビーストの存在は確認されていない。

突然、リリアリスが身構えたか思うと彼女は素早く走り出す。

緊張感が高まる。そして、その時が来た。


「・・き、確認、・・・機。注意・・・確認。」


インカムの通信は雑音だらけだが、リリアリスの声は明らかに敵の存在を警告している。


「・・・」


無言のうち。

ガキンッ!ガシッ!

前方から金属音が響く。前衛が戦闘状態に入った様だ。

射手としてケリーがサポートに入ろうと移動を開始。チェイスも遅れる事なく後を追う。

前方にいたオリバーは二人よりさらに素早く反応し、行動していた。

ザッザザッザ!

オリバーは新型機獣メタルビーストを刺し貫いた場所を疾風の如く通り過ぎる。

今だに散乱していた遺体も、腐臭も、皆は気にとめることはなかった。いち早く探し出すべきは敵の機獣メタルビースト、そのスピアヘッドである。

ガシッ、ザシュッ、ガッキュイーン!

チェイスは森を駆け抜ける。

打ち付ける、さらには切り裂く様な激しい残響。戦場はもう目の前。

二人の後ろ姿がはっきりと見えてきた。オリバーはリリアリスをかばう様に彼女の前に出て剣を構えている。

リリアリスはトリガー式の信号弾を両の手で握り締めていた。

ザッ!

オリバーに倣い、リリアリスの前に出るチェイス、その先には大きく開けた場所があった。

正面に視界いっぱい広がる岩壁は壮観。しかし圧倒される暇はない。

視界には人型と思しき機獣メタルビーストと戦う勇士ブレイブマンたちがいた。

少なくとも20機に及ぶ人の形を成した機獣メタルビーストが、それぞれ武器を片手に攻撃を仕掛けて来る。

銀光に照り輝く髑髏と、赤く光りを放つ双眸、骨と皮だけになった人間を連想させる金属の身体は、その存在だけでいい知れない恐れを撒き散らしている。

そして、ジャイアントクラスに数えられる球根型タイプD機獣メタルビースト一機。岩壁を背に俺たちを見下ろしていた。

球根型タイプD機獣メタルビーストは、3メートル近い大きさを誇る鱗茎の様なボディから無数の根を生やしている。人間の胴体よりはるかに太いその根っこは、シュルシュルと触手の如くうねりながらも、球根ボディをさらに6メートル近くにまで持ち上げていた。

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