第13話 前夜2

深夜。見張り以外の誰もが寝静まる頃合い。長老の屋敷にはいまだ灯火の照らされた一室があった。


「どうだ、あの二人、御前達はどう見た。感想を聞かせてくれ」


質問した男、リアム隊長のまえには神妙な面持ちのケリーと、何時もの無表情なソフィーが立っていた。


「じゃ、私から、オリバー、ずっと背後にいたから、実力は全然分からない。チェイス、よく機転が利く、でも実力はどうだろう。新人の割には出来る方だとおもう、後、気前がいい。ここ重要」


キラリと目を光らせ金貨の入っている袋を見せる。ケリーはソフィーの報告に少し怪訝な表情を浮かているが、リアムは特に気に留めてはいない。


「うむ、これまでの働きでお前の実力はよく分かっている。今回の件が終わったら契約の満了だ。更新を望んでくれるなら報酬に関しては男爵に掛け合おう。ではケリー、お前はどう見た」


「は、はい、オリバーさんの実力はまだ分かりませんが良いムードメーカーですね。士気を高めるのがうまそうです。チェイスさんは、正直凄いと思います。新型の機獣メタルビーストに対して臆する事なく立ち向かって行く姿は新人とは思えませんでした」


腕を組みしばし考えに耽るリアム。


「うむ、では引き続きケリー、お前は彼らとチームを組みその実力を見極めてくれ」


会議室から退室した二人はそのまま屋敷から出て行く。

少し歩いた所で、やっとの思いで決心したケリーはソフィーに問いかける。


「ソフィーさん、さっきの報告はどういう事なんですか?何時もの貴女らしくないっていうか、適当な感じを受けたん、ですけど」


「ん、私は目の前で見た事、感じた事を素直に報告しただけ、オリバーはまんまだし、チェイスはサルを倒したけど、まぐれだよ。本人もそう言った」


振り返るソフィーは淀みなく答えた。その目にはこれ以上話す事はない、そんな意思が見て取れた。


「そう、だけど」


やはりケリーには違和感が拭えない。しかし、それ以上の追及も出来なかった。

リアムもあなたも悪くはない。でも、ハーディー男爵の下にいるのは頂けない。ただそれだけ。

ソフィーは本心を語る事はなかった。

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