第4話 戦う者2

システム『ヴァルキリュア』それは人類がこの地で機獣メタルビーストと戦うために作り上げた技術であり、外科手術によって胸元に埋め込まれた結晶石は人体の大幅な強化のみならず個人の潜在能力を引き出してくれる奇跡の石なのである。体内で捻出されるエネルギーはマキナと呼ばれマキナは専用の装備を起動させ勇士ブレブマンの戦闘能力を更に引き上げて行くのだ。

機獣メタルビーストとの数百年にも及ぶ戦いの最中『ヴァルキリュア』は数多くのカスタマイズを経て、現在の型に落ち着いたのは約200年前とされている。

確かにチェイスの『ヴァルキリュア』はここに居る誰もが身に付けている物とは違う。

見た目、オリバー達の黒い結晶石は楕円形の餅菓子のような形状をしていて、胸部の上位、胸骨柄辺りに位置を保っている。表面はツルッとした真珠の様な光沢を持っていた。

一方でチェイスの黒い結晶石は位置取りこそ同じだが、形状は鋭角的でな物であり、翼を広げた鳥の様にも見えた。結晶石は見事にカットが施され角に光が反射している。


「ああ、これは両親の形見ってヤツでして、ええ、無下に扱うことも出来なかったんですよ。まぁそのお陰って言うのもなんですが、こいつの事は調べられるだけ調べましたよ。ああっ、もしかしたらあなた方より詳しくなってるかもしれませんね。良かったらってヤツを教えて差し上げましょうか?勿論、有料で」


そしてここは爽やかな笑顔、だな!

チェイスは実に、わざとらしくにこやかな笑顔で答える。

エスは更に悔しそうに顔をしかめるがそれでも食い下がってきた。


「で、でもよぅ、命は大切に使うもんだぜぇ、価値はあっても現に様、それ、お前さんの『ヴァルキリュア』に装備が対応出来てねぇじゃねぇか」


「うむ、うむ」


『ヴァルキリュア』の型、その古さゆえの弊害を突いてくるエス。その指摘は実に正しい、旧型といっても単純な武具の強化に支障はない、しかし機械的な装備には致命的とも言える問題が出てくる。特に金の無い一勇士ブレイブマンという立場においては。

そして事実、チェイスがヘルムの装備相手に格闘していたのは、その調整に手間取っていたからだ。

しかし、彼にとってはこの程度のハンデは戦場に立つ前から覚悟していた事。

チェイスはエスの言葉には揺るがない。

こいつらヤケに必死だな。

チェイスはオリバーの方を見た。彼も此方に目を合わせ『関わらないよう方がいい』と伝えて来る。


「えー、申し訳ないが・・・」


「チェイス・シン、オリバー・グレイ!」


チェイスの台詞は自分たちを呼ぶ声に遮られてしまう。

グリーン・ラインのアンダースーツを着た正規の隊員が此方の様子に気づき走り寄って来た。


「チェイスとオリバーだな。分隊長がお呼びだ。中央の広場に向かえ、村長の屋敷だ。急いで行けよ」


それだけの用件を伝えると、その隊員はさっさと別の場所へと遠ざかる。


「そんじゃま、そういう事なんで失礼しやっす」


オリバーはチェイスの腕を掴むとこれ幸いとばかりにその場を離れる。チェイスは少し後ろを振り返ってみると、ゴルドは相変わらず腕を組んだまま微動だにしていないが、エスは悔しそうに石を蹴っ飛ばしていた。

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