第20話

せめてもの幸運に、すぐに小雨が降り出し、犬の気配は消えていった。

コーロの血の匂いが消えたのだろう。

何かの芝居であるような死の直前の感動的なセリフもなく、コーロは脚を微かに動かし頭を掻く仕草を見せた。瞳を薄め、一度大きく息を吸った。そのまま途切れ途切れの断続的な呼吸は聞こえなくなった。

コーロの丸くクリクリとした瞳は急速に輝きを失った。


コーロは最後に笑顔を見せてくれたのだろうか。言葉などはいらないし、コーロは私の元に帰って来てくれた。それだけで充分すぎるほどだ。

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