第11話
子供たちが旅立ち、初めの嵐が来た夜だった。
何の前触れもなく、コーロは妻を失った。安堵したのか、嵐が連れ去ったのか、もしくは寿命なのか。
嵐が去った後、急ぎすぎた帳尻を合わせるかのように景色は時を止める。コーロは私に背を向け(そのひと時ばかりは独りでいたかったのだろう)、時間をかけ頭を垂れ、ゆっくりと空を見た。それは彼女から抜けていく魂を月まで見届けているように見えた。
闇に一滴落ちた雫のように、コーロの瞳は濡れていた。
ピッタリとはめこまれたパズルのようで、私は彼の背中を抱いてやることさえ躊躇われた。
私にとっても彼同様、辛い別れだ。だが私は彼と言い合っていたとおり、そばにいるだけで何もできなかった。しかし理由など必要ない。私と彼は彼女を永遠に失った。それだけだった。
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