第9話
私は彼らに出会い、知らずのうちに幸せや憤り、焦り、不安などの感情を手に入れていた。不思議と私自身が幸せを作り出したい、という想いは沸いてこなかった。幸せのそばに居るのはなかなか心地が良い。それは内輪を知らずに表だけを見ていられるからかもしれない。
いや、生来持ち合わせた私の性格だろう。
以前コーロの妻に「あなたには家族がいたの?」と聞かれた。彼女の質問の意図としてはおそらく、その質問を皮切りに、初めての子育てや家事、家庭に関するそれらの一般論を聞いてみたかったのだろう。だがそもそも私に質問すること自体、無意味だ。
「いた気もするし、いなかった気もする。今はどうだろう?いるかもしれない。」やはり無意味で見込み違いの返事をされ、彼女は意図を少しずらしたようだった。
「それって私たちの事?それなら嬉しいのだけれど。」
そうかもしれないね、と微笑みながら濁すと彼女は少し首をかしげ、間を置いた。
「あなたって抽象的なことしか言わないのね。」と、そんなつもりではなかったのだが、不機嫌にさせてしまった。
多分コーロなら「僕もそんな気がする。」と答えてくれただろう。
女性というものは難しい。質問してくる時には大抵、正しい答えの糸を一本しか用意していない。
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