第6話
今までに互いに質問することはなかったのだが、私は一度だけ彼に質問を投げかけた。
「君には夢というものがあるのかい?」
コーロは「夢」という言葉についてことさら真剣に考えているようで、私は調子を見て続けた。付け足さなくてはならない。
「この間、村の子供たちがはしゃぎながら「僕は物書きになって、売れて君と結婚するのが夢なんだ」と言いながら歩いて行ったんだ。夢、というのはそのうちに実現させる目標のことなのかなって思ってね。それが君にもあるのか気になったんだ。」
コーロは少し瞼を薄めた後に、何か掴んだように私を見た。
「実現できることを夢とするなら、僕はいつか家庭を持って家族を幸せにするということだと思う。幸せにしてきたかどうかは別にしても、これは代々受け継がれてきたことだし、僕もいずれそうすると思う。できないことを夢とするなら、そうだな、僕は君になりたいかな。」
彼は照れながら笑う。
私になることにどんな得があるのだろうか?と考えてみたが、何も浮かばなかった。つくづく彼は変わり者だと思ったが、それには「君と出会って僕が幸せだから」という優しい彼の真意があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます