第6話

今までに互いに質問することはなかったのだが、私は一度だけ彼に質問を投げかけた。

「君には夢というものがあるのかい?」

コーロは「夢」という言葉についてことさら真剣に考えているようで、私は調子を見て続けた。付け足さなくてはならない。

「この間、村の子供たちがはしゃぎながら「僕は物書きになって、売れて君と結婚するのが夢なんだ」と言いながら歩いて行ったんだ。夢、というのはそのうちに実現させる目標のことなのかなって思ってね。それが君にもあるのか気になったんだ。」

コーロは少し瞼を薄めた後に、何か掴んだように私を見た。

「実現できることを夢とするなら、僕はいつか家庭を持って家族を幸せにするということだと思う。幸せにしてきたかどうかは別にしても、これは代々受け継がれてきたことだし、僕もいずれそうすると思う。できないことを夢とするなら、そうだな、僕は君になりたいかな。」

彼は照れながら笑う。

私になることにどんな得があるのだろうか?と考えてみたが、何も浮かばなかった。つくづく彼は変わり者だと思ったが、それには「君と出会って僕が幸せだから」という優しい彼の真意があった。

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