第5話

コーロと出会い、すぐに意気投合し、同居するほどに仲が良くなった。誰かと居るより気にならず、独りで居るより暖かい。

彼は決して私を傷付けなかったし、何より私の知らない世界を知っている彼の話はとても刺激的だ。(コーロは帰って来ない日はないが、仕事柄、様々なところへ出向く。)

コーロが帰ってきて、見てきた物や、あった出来事を聞くのが終日の楽しみであった。

「何だか村が賑わっていたよ。祭りでも始まるのだろうか?」

「最近新しい家族が越してきたみたいだ。見たことのない親子がいた。」

「そろそろ本格的に寒くなるから村のみんなが狩りの準備をしていたよ。」

そんな日常的な、他愛ない話だ。だが遠くから眺めているだけの私が、疑問にも感じなかった事に、先に答えを当てはめていくのだ。私の中にある無数の鍵穴に彼が鍵を差し込んでいってくれる。

それは私に豊かな知識と―あくまで知識だけだが―表現力を与えた。他にもコーロは以前、海が見える崖の上に住んでいたことがあり、潮の香りや、朝焼けに染まる海の綺麗さ、魚の美味さ、時には強風が吹いた時の恐ろしさなど、たくさんの話をしてくれた。

表現がうまくできない時は「君に見せられたら早いのだけれど。」と少し寂しそうに言った。

しかし私にはコーロの言葉だけで充分で、見知らぬ話よりも―と言っては失礼かもしれないが―朗らかに話す彼を見るのが好きなのだろう。

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