第4話
意識はしていないが十何度目かの決して少なくない季節が去った寒い朝だった。私に友人ができた。
彼は寒々と身体を震わせながら私の近くに歩いてきて「ここに座ってもいいかな?」と聞いた。私は心底驚いた。傷付けたり、そこに居ないように(私という固体ではなく壁のように)扱う奴はいても、呼びかけられたのは初めてだ。必死に平静を装った。
「もちろん。居心地は保障しないけど。」
久しぶりに自分の声を聞いた気がした。頭の中では声が意味を無くし、音に変化しグルグルと反復する。かなりのひねくれ者に見えたことだろう。しかし思い返すと彼もまた、平静を装っていた。
なぜならその時、彼はひどく頭を掻いていたからだ。
私は彼のことを「コーロ」と呼んだ。舌足らずな上に、巻き舌気味で、言葉の最後にそう聞こえたからだ。彼はその名前をひどく気に入ってくれた。だが、呼び名をつけたところで私たちに名前など必要なかった。
「私」と「彼」。「僕」と「君」。
私はただ、私だけの「コーロ」と呼びたかっただけだろう。
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