第2話

私は初夏の台風が過ぎ去った、穏やかな風吹く日に生まれた。

どう動いていいのかもわからずにがむしゃらに身体を伸ばしたものだ。両親はそんな私をいつも暖かく包んでいた。しかし私の背丈が伸び、少し自我が芽生えた頃に消えた。

消えたのか、居なくなったのか、理由はわからないままだ。疑問など微塵も感じないほど、自然に、消えたのである。

今ではほとんど、両親のことを憶えていない。そもそも本当に居たのかもわからない。私が勝手に創りあげただけかもしれない。



暮らしている所は村の少し外れの、丘とも呼べぬ膨らみの上にある。後ろにそびえ立つ山の木々は私を避けるように生えており、村の賑わいとも自然とも近くなく、遠くでもない。

両親が残したのであろうこの場所は、寂しさも鬱陶しさも感じず、気に入っているかと問われればそうだろう。

だがどこに住んでいても構わずに、当たり前に、平等にやってくる「季節」というものには少し大人しくしてほしいものだ。

夏は暑く喉が渇き、冬は寒く肌が痛い。とはいえ、私がそれに抗うことなどないのだが。

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