第4話

 とある場所にある展望台に、私は「彼女」を呼び出した。呼び出しても来ないかもしれない、そう思っていたが、彼女は姿を見せる。

「来てくれて、ありがとう」

「まあ、暇だったし」

 素っ気なく、彼女は言う。彼女っぽいと感じてしまうのは、これからの付き合いの長さからだろうか。

「×××××くんに今後、近づかないでほしい。あなたはそう言いたいんでしょう?」

 状況的に、解って当然か。

「結論から言えば、嫌だわ。あたしはあたしの自由にする。誰にも縛られない」

「そうね、強制する道理はない。あくまでもお願いとして、聞いてくれるかしら」

「それでも、嫌」

 あくまでも彼女は、私の思い通りにはなりたくないらしい。

「機会があれば、あたしは×××××くんに近付くわ。何度だって、ね。一つは、あなたへの恨みから。一つは、あたし自身が彼に惚れたから」

「私への、恨み?」

 私には覚えがない。彼女に危害を加えたことなんて、なかったはずだ。

「何で、あなたは私を恨むの?」

「あなたが、最後に残っていた友達だったから」

 何となく切れてしまったつながり。彼女にとってはもっとも重要なつながりだったのかもしれない。

「けれどももう、あなたとは繋がれないわ。あんなことがあったもの」

「知ってる、だから一方的に、あたしはあなたの邪魔をするの」

 明らかな挑戦状だと、私は感じた。──面白い。

「そうね、彼があなたの手に渡るのは、私が彼に飽きたときよ?」

「まさか、それまでに落とすわよ? どんな手段を使ってもね」

 彼女は去っていく。──絶対に手離してやるものか。

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