第19話「相関」
第十九話ー「相関」
橙子は、ワンコ面の柿山を焦らすように「マルボロ」に火を点け一息吐いた。
ーーーつまり、こうなんじゃないかな、、、FDCは「投資情報」という飴で「東海コンサルタント」を手なづけていた、、、
ーーー投資情報?
ーーーそう、「赤と青」はアメリカの二大政党のイメージカラーで、赤は「共和党」青は「民主党」。で、今回の大統領選はどっちが勝つかによって為替相場も日本の株価もかなり影響を受けるってこと。
ーーーなるほど、、、FDCの傘下には「FDC証券」を抱えていたな。そこでの分析結果を「投資情報」として流していたってことか、、、
ーーーで、何桁かの数字はおそらく「証券コード」のことね、「銘柄コード」とも言うけど、投資家はネットや「会社四季報」で企業の業績なんかを調べる際に使ってるやつ。
ーーーあぁ、、、この銘柄が有望でっせと、数字で浅井に知らせていたわけか。
橙子は、訳知り顔でさらに続ける
ーーーただ、それだけじゃ何ら”罪”には問われないよね。普通に「投資情報」の提供であって、その見返りを貰っても特段の問題はない、、、
ーーーそうだな、、、「東海コンサルタント」がその情報で儲けた金を上納金として「大川組」に流していても、それは預かり知らんことだと言ってしまえばFDC側には何ら問題はない、、、
アカンがな、それやったら、、、。
最近、柿山はちょくちょく出処の関西弁を使う
ーーーあきまへんなぁー
橙子はわざと語尾を間延びさせ「京都弁」て応えてやる。
ーーーただね、、、もしも、「FDC」もしくは「FDC証券」が不正に「情報」を得る、もしくは「情報」を作り上げていたら、、、それは立派な犯罪。特捜
それと「サイバーテロ攻撃」、こっちは公安
ーーーそうか、、、そうそう儲かる
ーーーだから、「東京地検特捜部」のお出ましってことね、、、それに政治家や高級官僚が絡んでる、と見てるわけ。
ーーー流石、橙子姐さん、、、
ーーーアホか、アンタに「
柿谷はだらしなく口元を緩め、ケタケタとおっさん笑いを寄越してくる。
ーーーウチらとしちゃ、FDCが飴を浅井んとこに呉れてやってるその「見返り」がなんなのか、、、そいつを掴まないとね。
ーーーりょーかい、そっちは俺と県警の「組対」引き込んで探ってみるわ。
橙子は、鞄小脇に席を立とうとする柿山の肩を抑え、聞いた。
ーーーでさ、柴田は赤と青のどっちだって言ってたの?
ーーー「赤」、だってよ。
柿山はその意味を探ろうともせず一言で答え、店を出て行った。
橙子は口元を微かに緩め、黙って言った。
ーーー(、、、これってインサイダー、じゃないよね?)
橙子は、スマートフォンから「FXアプリ」を開き【ドルー円】を「売り」で50枚注文を出した。
ーーー(給料安いんだから、バイト、バイト、、、)
ヒョイと肩をすくめ、自分も店を出た。
三日後にアメリカ大統領選挙が控えていた。
(第十九話ー了)
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