第18話「機密」

 第十八話ー「機密」


 滝川と明石が、小野田に呼ばれ役員室に居た。


 ーーーで、どうだ?「地検」の動きは。


 ーーーどうやら、本腰入れて来てるみたいです。捜査指揮にあたっているのが本郷というのも意気込みを感じますね。


 本郷英二、「東京地検特捜部」部長で「特捜のエース」として数々の功績を残して来た男である。

 小野田は滝川の口から出た本郷の名を聞いて眉間のシワを深くした。


 そして明石も控えめな口調でそれに被せた。


 ーーー秘書の朝倉さんからも、今後、接触には注意してくれと言ってきてます。

 

 朝倉は、政府与党「政友党」幹事長の袴田幸太郎の公設第一秘書で、小野田と袴田を結ぶ窓口になっている。


 役員室の空気が冷たくなるのを打ち消すように滝川が小野田の顔を伺うように口を開いた。


 ーーー社長、ちょっと別件なんですが、いいですか?

 小野田は無言で頷いて返した。


 滝川は、何枚かのコピーを小野田に手渡し続けた。


 ーーーが、先月「警察庁」のサーバーに潜り込んだ際につまんで来た「FILE」なんですが、その時はかなり複雑なロックが掛かっていたんでずっと解除方法を探ってたんですけど、それが昨日その一部の解除に成功しまして、、、


 ーーーほぉー、で、なにが入ってたんだ?


 小野田は煙草に火を点け身を乗り出した。


 ーーーどうやら、「機密費」の帳簿らしいんです。


 警察組織において、「機密捜査費用」として「機密費」という勘定科目があるのは、調べれば誰にでも知り得ることであるが、その金の流れは詳らかにされていないのが常であった。


 ーーー「機密費」は公然の秘密事項だろ? 「収支」が公にされていないだけで、、、

 ーーーええ、そうです。仮にこの「機密費」の帳簿を「FILE-A」とすれば、この

 Aのファイルの下にいくつかのFILEらしきものが紐付けられているんです。


 小野田の目が獲物を捕捉した猛禽類の眼光の様く鋭く光った


 ーーー外からは見えないのですが、何かがぶら下がっているとこまでは解析が進んでます。

 ーーーつまり、完全に秘匿しておきたい、、がそこに隠されているということか?

 ーーー開けてみないとわかりませんが、おそらく。関係者でもごく僅かな人間しか閲覧できないような、、、何かが、、、


 小野田は直感的に、使えるーーーだと確信した。


 ーーー全力で解析してくれ、、、とんでもない「埋蔵金」が出てくるかもな。


     ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


 柿山は東京地検の検事に捜査情報をされた時は上っ面の情報だけを流して誤魔化した。


 ーーー俺たちの縄張りまで入ってきやがっておまけにを掠め取ろうとしやがる、、、ヤクザよりが悪いぜ


 ーーーふっ、追っかけてる、ってか?


 そう言って橙子はゲラゲラと声を上げて笑った。


 ーーーでだ、あの二人の会話にあった、赤、青、、、、それに何桁かの数字ってなんだろうな?

 橙子は膝の上に片肘乗せて考えている。

 ーーー「東海コンサルタント」って株や為替取引で儲けてるって言ってたよね?

 ーーーあぁ、そうだ、それが裏社会に流れてるらしい


 橙子は人差し指で鼻先をポリポリ掻きながら、やがてコクリと頷き鼻から小さく息を吐いた。


 ーーーなぁーるほど、、、そういう仕掛けか。


 柿山は、ビーフジャーキーをねだる犬みたいな従順顔で、橙子のを待っていたーーー。


             (第十八話ー了)


 


 


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