第16話「予感」
第十六話ー「予感」
柿山からの情報で、小野田が上京し「金融庁」の役人を接待すると聞き、先持って「品川」の自分のマンションに戻ったその夜、小野田を「神楽坂」から付けて来た橙子だった。
が、しかしそこにかつての恋人である羽田の姿を見つけ、動揺を隠せずにホテルを逃げるように飛び出して来た。
「品川」の深夜の道をどう歩いて戻って来たのか覚えていない。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、乱暴にプルタブを引いた。
ーーー(なんで、ケンがあそこに、、、)
高ぶる気を鎮めるようにビールを一気に呷りタバコに火を点け、大きく紫煙を吸い込んだ。
血中にニコチンが一気に沁み渡り脳が痺れ硬直した筋肉が弛緩していく。
ゆっくりと霞を吹くように息を吐いた。
ーーー(まさか、、、?)
羽田の元から多くを語らず消えた橙子であったが、羽田のことはずっと頭の片隅にあって、気に留めていた。
ーーー(確か、、、今は「高松地検」に居るはず、、、)
もし、羽田が密かに小野田を内偵していたとなると、「地検特捜部」が動き出しているという柿山の情報と符合し、彼が「東京地検特捜部」に居ることになる。
深夜のこの時間に一人、あの場所に検事が居たーーーという事実もそれを示している。
ーーー(ケンと同じ相手を追っている、、、)
橙子は五年ぶりに羽田に会ったという動揺以上に、捜査対象を追いかけて来て、今同じ現場に立っているということに因縁さえ覚えその戸惑いはズシリと重かった。
一方で、断ち切ったはずの糸が、見えぬ力で繋ぎ戻されていて、新たな舞台で違うキャストを交えさらに複雑に絡み合い縺れ、引きつ引かれつ自分が思いもよらぬ結末に連れていかれるのではないか、得体の知れない感情にも囚われていた。
橙子は窓から見える小野田と矢神真咲が宿泊するホテルの小さな灯を、もう一人の自分が見ていることにまだ気づいていない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小野田は、ウィスキーグラスを片手に闇夜に浮かぶ月を見上げていた。
今夜接待した小役人は、近々、監査部門による抜打ち「監査」があることを仄めかしていた。それは見返りを寄越せというシグナルに違いない。
ーーー最近は、ロシア情勢も気になりますなぁー
ーーー(クソ豚野郎が、、、)
白人女の股間をびちゃびちゃと醜悪な音をたて舐め上げ、一晩中何度も女の中に欲にまみれ腐ったザーメンを流し込んでは果て、明け方には無防備にそのでっぷりとした狸腹と呆け顔を晒し眠り込むーーー「高級官僚」という仮面の下の醜悪で薄汚いブタ野郎の顔。全て撮られていることも知らず、、、
健斗の背中にバスローブを着けた真咲が絡みつき、その細くしなやかな手が健斗の男に纏わり付き求めてくる。
健斗は荒々しく真咲のバスローブを剥ぎ取り、薄い布切れ一枚に隠された真咲の果肉を指でなぞりながら、ピンと尖った乳首に舌を這わせ激しく吸った。
夜のしじまを女の歓喜の声が突き破った。
(第十六話ー了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます