第4話

もうくんへ・・・・・


あなたは、僕のご親戚で、大先輩という立場でしたが

会社の社長さんとして・・大会社じゃなかったですけどね・・・

あなたの地域に大きな貢献をなさいました

あなたの造る製品は

かつては、その地域の地場産業、ということでしかなかったけれど

今では、世界中の人々が、何とか手に入れたいと考えているほどの、

すごい品物になりました

もう、びっくりです


あなたは昔、お酒に酔いながら、僕に言いましたね

「しんちゃんは、頭が良くて、何でも先の先まで考えていて、それから、ものを言うから、そんな言い方になるんだ。もっとストレートにはっきり言った方が良い」とね


そうなのです

「だから、君は、ばかだな」

とは、あなたは言わなかったけれど

まあ、そう言ったも同然なんですよ

よくそこで、止まってくださいましたね

 

でも、若い僕は、その意味さえ掴もうとはしませんでした。


自分を、ただ守ろうとすれば

それは他人(ひと)をないがしろにする

自分を、ただ正当化しようとすれば

それは他人をおろそかにする

自分を美化してくれる人だけを、大切にしようとすれば

それは、より弱い人を裏切ってしまう


もし本当に一人だけで生きて行けて

誰も傷つけなくて済むのならば

人は、ただ一人だけの方が、幸福なのだろうか?


あなたは、強烈な反証を見せてくれていましたね


でも、ぼくは、今、この家に、ただ、こもっているのです

あなたに対する回答は、まだ出来ていません

今は、到底できません

功成り名遂げたあなたの前に

僕は、そんな自分に対して、痛烈に心が痛むのです


それは、バカみたいな功名心の名残?

単なる負け犬の遠吠え?

それとも、夢?


もうくん、あなたは本当に立派でした

いつか天国で、回答します

ちょっとだけ、待っていてください


                もうくん  永遠に、安らかに・・・






















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