第3話
もりちゃんへ
なぜ、あなたのような才能豊かな人が
そんなに急いで天国に行く必要があったのですか
ぼくは、病院のあなたに、あのCDを届けました
あなたの楽器のCDです
ぼくは、わざわざ、あのCDを買うために
遠くの大都市まで出かけたのですよ
そうしてこの国ではなかなか手に入らないものを
あなたに、届けました
そのあと
ぼくは尋ねました
「あれ、どうだった」
と・・・
あなたは言いましたね
「正直言って、あの演奏は気に入らなかった」
と・・・
そこがいかにも、あなたらしいのです
普通だったら
「まあ、よかった、ありがとう」
で、済ましてしまうものです。
でも、ぼくは後悔しています
どこが、どう、気に入らなかったの?
そこを、聞いておかなかったことを
だって、ぼくは
あのCDを聞いていないんだからね
人はどうして
傷つけあわなければ、生きられないのだろうか
傷つけあうことで、お互いが成長するのだ、と?
もしそうならば、人の一生は
やっぱり、少し悲しい
あなたは、早く逝きすぎです
もっと、あなたの演奏で
傷つく人を、癒してあげるべきだったのに
あなたにしか出来ない方法で
でも、ありがとう
あなたは、あなたのご家族や
多くの聴衆を
励まし、助け、支え、癒してくれました
どうか天国で
素晴らしい音楽を
続けてください
永遠に、安らかに・・・
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