45話「ロリへの愛は世界を救うか?⑰~中ボス戦 終~」

http://suliruku.blogspot.jp/2017/03/45.html

補足説明・ネタバレ全開ver

 


★★★


床が超高熱のマグマと化している以上、飛行盾から落とされたら人生終了だが……まだ俺には奥の手がある。

しかし、今のタイミングで使うと意味がないのだ。奇襲攻撃で一気に逆転しないと勝てない。俺は魔力が少ないし、ドナルド先輩みたいな複合魔法も使えない。

小手先の工夫じゃ足りないくらい、手数はドナルド先輩の方が上で魔族がいて、戦力に差がありすぎている。


「これで終わりだよ!襲撃暴風波(キル・ストーム!)」


これでトドメだ!と言わんばかりに、ドナルド先輩が発動した魔法は……風を強化した複合魔法だった。

しかも、魔法の鞄から土を出して、目潰し攻撃まで兼ねてある。目を開けない。詠唱すれば口に砂が入る。魔導師が嫌がる事をしまくった強風だ。

こんな状況じゃ、俺の方も魔法の鞄からアイテムを出しても意味がない。落下地点が風のせいでずれるし。目を開いた瞬間に、大ダメージだ。目は外部に露出した臓器であり、簡単に壊れる弱点なのである。

こうなったら、奥の手を使うしかない。そう思った瞬間――


「えへんっ!正義の味方はピンチの時に駆けつけるんですよ!」


病みつきになる可愛い声が場に響いた。場の温度が一気に代わり、先ほどまでマグマのせいで暑かった密閉空間が急速に冷えていく。どうやら、白真珠が魔氷剣をマグマに突撃させて、凍らせたらしい。

マグマは物理的な存在に過ぎないから、魂的な存在である魔氷剣には何のダメージもない。考え尽くされたやり方……と言いたいが、何も考えずに、マグマに魔氷剣を突き立てただけなのだろう。

この魔氷剣も、よく考えたら、全く異なる進化を遂げた魔族の一種なのだと思うのだが、そこらへんは気にしちゃ駄目だ。迷宮管理機構あたりが激怒して、白真珠を黒バッジに落としかねない。

俺は目を開く。飛行盾から落とされた俺は凍った床に着地。強風は勢いを失って、砂は飛んでこない。

ドナルド先輩は、白真珠が次々と投げてくる氷を回避しながら対処して、雷と風を混ぜた複合魔法を詠唱しつつある。これが完成したら、白真珠は黒焦げになるか、また遠くへと飛んで戦線離脱しかねない。

一気に叩き込んで、形成を逆転するために、俺は今まで隠していた奥の手を使うことにした。


「いけぇー!今までの話を聞いた通り、あのやさぐれたサラリーマン風の男はっ!快楽の魔族の味方をして、ハーレムやっている糞リア充だぁー!」


俺の叫びに、影の中に潜んでいた影人間達が、ドナルド先輩に殺到する。

影人間も魔族も、どっちも魂だけの生き物だが、さすがに遮断装置で毒電波を浴びて、弱体化している魔族相手なら、呪文の詠唱の妨害くらいはできるはずだ――そう思った。


ゾクリッ


強大な魔の気配が、通路の各所から漂う。この感覚を俺は知っている。

第二階層に行った冒険者なら、誰だって分かっている。これは――魔族達が空間転移をする際に使う亜空間を通った時に起こる……波の波紋のようなもの。

つまり、遮断装置は壊されてしまったのだ。今頃、ワープゲートの周りに展開していた米軍は、一方的に虐殺されているはずだ。空間転移して、どこにでも現れる魔族に対処できるはずがない。

空間の点から点を移動できるってことは、その途中にある兵力を全て無視して――相手の弱点をたたける。

そういう卑怯すぎる戦術を使えるからこそ、魔族は人類に対して優位なのだ。

当然、影人間が、本来の性能を回復した魔族に勝てるはずもない。

影人間は影から影にしか移動できないが、魔族は360度方向、距離という概念をかなり無視して移動する。そんな標的を補足するのは、通常の影人間には無理だ。


「どうやら……間に合わなかったようだねぇ?」


ドナルド先輩の皮肉交じりの呟きが聞こえた。

俺の負けだ。そう思って――ドナルド先輩を見たら――影人間達に囲まれてボコボコにされて、床に倒れふし、その上に乗った白真珠に、指を一本一本ポキッポキッと折られている先輩の姿があったじゃないですかぁー。


「えいっ!悪党の指はこうです!食事ができるように2本くらい指を残しておきます!しばらくスプーンで食べて生活してくださいね!」


「苦しみの魔族に拷問されたせいで、この程度の痛みなら気持ちいいくらいさ」


「えと、足の骨もおります?」


「出来ればトドメを刺してほしいんだけどねぇ……」


どうやら……先輩の宿している苦しみの魔族の自我が崩壊しているせいで、複合魔法を使えるだけの補助的な存在に成り下がっていたようだ。

影人間に大人しくボコボコにされて、少しづつ、先輩の魂が削れつつある……。

俺は悲しい思いになりながら、影人間達に拘束するようにお願いをした。普通にお願いをしても、劣等感の塊である影人間は言うことを聞かないので『その男は苦痛大好きなM男だろ!どう見ても!』とツッコミを入れることで、奴らを納得させた。

今、ドナルド先輩の体は、触れている相手の魔力を吸いまくって大きくなる縄で拘束してある。時間をかければ魔法で壊せる代物だが時間稼ぎ程度にはなるだろう。


「ふ……どうやら見抜いたようだねぇ……トモヤ君。そうさ。僕の器に入っている魔族は自我がない。だから、こういう近接戦闘にはとことん弱くてね。僕が命令しないと何にもできない木偶の棒だったのさ」


「縄でグルグル巻きになっている状態で、そんな事を言っても情けないだけだぞ……」


「どうした?トドメを刺さないのかい……?」


「先輩、破滅したいなら、人のいない所で破滅してください」


「……やれやれ、殺せないなんて甘ちゃんだねぇ……僕みたいな悪党を放置なんて……正義の味方がやる事じゃないよ」


なんとか先輩を殺さずに済んだが、現状は絶望的すぎた。

遮断装置が停止している……いや、壊されていると見るべきだろう。

だが、ひょっとしたら停止しているだけで、まだ遮断装置が生きているかもしれないし、ここで逃げても家畜にされるだけだ。

距離の概念が存在しないに等しい魔族相手に、逃げられる奴はいない。いや、遮断装置が稼働している地域や、地球まで逃げれば大丈夫なような気がするが、それは長すぎて現実的なプランではないのだ。

魔族は今頃、車で通行できないように、魔法で道路を壊しているだろうし。


「ドナルドさんっ!こういう時、別の悪党が襲ってきて、正義の心に目覚めたドナルドさんが主人公を庇って死ぬっていう展開が盛り上がると思います!どうかそういう人物になってください!

お師様が困りますから!」


そう言って、白真珠がドナルド先輩の指の骨を更に折った。


「……うーん、そういう展開はどうなんだろうねぇ。いや、破滅できるし、中々に良いかもしれないねぇ……。好印象だろうし、僕の人生の終幕にピッタリかな?

でも、もう人生面倒くさいや……。どこかのかわいい娘でも抱いて、ゆっくりしたいよ……。ぶっちゃけ苦しみの魔族に捕まったら、裏切り者扱いで特別待遇を受けるだろうしね……」


「どんな特別待遇なんですか?」


「そりゃさ……夢の世界に閉じ込められて、ずーとネチネチ苛められて、うざったいよ。快楽の魔族ならエロい事をしまくるだけだろうけど、苦しみの魔族と人類の相性は一番最悪だろうしね……」

 

---


(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)死亡フラグだぁー!?ドナルド先輩、死亡フラグたててますよー!


(´・ω・`)な、なんの事かなぁ……?


(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)なんてわざとらしい反応!?

 


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