第8話 鍛錬の日々

 イグナーツ君と一緒に教室に戻ると、イグナーツ君に声をかける男子生徒がいた。

 その男子生徒はあごくらいの長さの茶髪で毛先を遊んでいる。瞳は明るい若草色だった。

「ファウストさんは見つかった?」

 ファウストさんって誰だろうと疑問に思っているとイグナーツ君はすねた顔をした。

「やっぱりあの鳴き声はアオローラだったのだが、逃げられてしまった……。シュテルヒェに気をとられている間に消えたのだ」

 話しの流れから察するにあの三年生の先輩はファウストさんで、あの美しい鳥がアオローラという事なのだろう。

「へぇ、それで拾ったわけなのね」

 茶髪の男子生徒に目を向けられて緊張する。

「そう、シュテルヒェは俺の弟子になったのだ。そういうわけだからエーミルよ、仲良くするのだぞ」

「そんな子どもに言うみたいに言わなくたって大丈夫だよ。イグナに振り回される仲間なんだし」

 エーミル君にウインクをされて驚いた。そんな事された事がなかったから。あとイグナってイグナーツ君の愛称か。

「ん?なんだそれは、どういう意味だ!」

 二人はじゃれあって楽しそうだ。昔からの付き合いの雰囲気が感じられた。

「ああ、オレの名前はエーミル・ガウロリア。よろしくシュテルヒェ」

 あわてて僕も名乗ってよろしくと握手をした。



 それから二人といる事が多くなった。一緒にいる間は何もちょっかいはかけられなかった。

 三人で一緒に授業を受けて初級魔法を学んだり、魔法理論という座学などを学んだ。

 初日は軽く腕立て伏せと腹筋を百回させられた。そのあと木剣で素振りを百回、寮の周りを十周させられ途中で休憩はあったが死ぬかと思った。

 おかげでその日はぐっすり眠れた。次の日は全身筋肉痛になったけど。

 僕が筋肉痛でベッドから動けないでいると、エンゲがぴったりくっついてきた。するとくっついたところの筋肉痛がなくなった。

 驚いている間に次々とエンゲが筋肉痛を治してくれたおかげで動けるようになった。

 学校に行ってすぐにエンゲを登録するために紙を提出した。

 

 日々体を鍛えているとだんだんつらくなくなっていき筋肉がついてきた。

 そうしてクラス内の模擬戦の三日前に対戦相手が発表された。

 そこで僕にちょっかいをかけてくる人はチャールズ・ルイズという事がわかった。

 チャールズと対戦する事が決まった。

 

 その日からイグナーツ君の鍛錬メニューが変わった。

 的に魔法を当てるというものだった、授業で魔法の使い方は習っているし余裕かと思ったけど、走りながら的に当てろと言われた。

 イグナーツ君もエーミル君も余裕でそれをこなす。しかもイグナーツ君は通常の鍛錬で疲れているはずなのに百発百中だった。

 実戦だと的は動くし、相手も攻撃してくる。召喚獣もいる。そんな状況になるのにただ走って的を当てる事に苦戦するようでは勝てる事はできない事は自分でわかる。

 二人と一緒なら嫌な事はされない。だけどそれだと僕は弱いままだ。

 中庭で僕はエンゲに強くなるって約束したんだ。たとえ負けたとしてもできる事はやっておきたい。

 僕は後悔のないようにとにかく挑戦しまくった。

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