第8話
「各機、少女を援護!」
対馬沖から飛翔体を追い掛けていた戦闘機部隊は、福岡タワーに攻撃を受けたこともあり、少女を援護する形で対空ミサイルを発射する。隙を衝かれたようにそれらは飛翔体へと命中。十数発もの攻撃を受けた一機が海面へと落下する。
「一機撃破、目標はあと六機!」
F-2部隊のキャプテン機、長坂が操縦する機体は飛翔体の横を進行し、攻撃の指揮を執る。するとその目に、落ちていく少女が見えた。
「渡辺キャプテン、指揮は任せた!」
指揮権をF-15J隊の渡辺キャプテンに任せ、長坂はストール寸前の降下角度で少女の許へと機体を向ける。高度百メートル。落ちていく少女の下へと回り込みつつ、機体を水平に戻す。
すると海面へ向かっていた少女はふと、覚醒。降下角度を調整し、長坂の操縦するF-2Aの右主翼へと着地。そこから再び飛び上がる。
「……魔法少女?」
長坂は呟く。一方、バランスを欠いた機体はスクリューを始めた。
(こんなところで死んで、たまるか!)
長坂は我に返って操縦桿を調整し、長坂は機体を安定させる。と同時にズーム上昇で高度を一気に回復させる。飛翔体の上空まで来た所で、長坂は驚いた。
「飛翔体群、全滅。繰り返す、飛翔体群は全滅した」
少女の活躍、そして航空自衛隊による援護で、世界最強とされたアメリカ軍でさえも出来なかった完全勝利を得ていたのだ。
「各機、築城に帰還する。各機戦闘行動を終了、築城に帰還する、以上、長坂」
F-2部隊、F-15J部隊は出撃機の全機が、築城基地へと帰還した。管制要員を除く所属自衛官のほぼ全員がエプロンに並び、最敬礼で勇士を迎える。
数時間後、各メディアは総理大臣官邸会見場へと集まる。NHKテレビの放送は、中央に立つ浜岡 武郎。
『内閣総理大臣より、国民の皆様にお伝えします。福岡市を襲撃すると見られていた飛翔体群は自衛隊ほかの活躍により、壊滅しました。世界各地を襲っていた別個体群に関しても、撤退したとの報告を受けています。自衛隊には引き続き警戒態勢を解かぬよう指示を出しましたが、国民の皆様は安心して生活を送れるよう、政府として努めて参ります。さて、国内の被害についてですが、報道の通り福岡タワーは攻撃により損壊を受けたものの、他には混乱で数名の負傷者が確認された程度であり、大きな人的被害はないと思われます。日本がこれだけの被害で済んだのは奇跡的とも言えますが、一方世界各地の被害は甚大であります。そのため日本政府はIMFなどの諸機関とも連携をし、世界経済の立て直し、そして復興に尽力していく所存であります。──』
首相官邸からの内閣総理大臣記者会見は、国内だけでなく世界各地で同時中継された。特にヨーロッパではNHKが持つ、東京・パリ間の回線が生きていたため、NHKワールドの映像がほぼ直接、各国の放送局で使用されることとなった。一部の国では「何故日本だけが助かったのか、それはあの飛翔体と手を組んでいたからだ」と批判する人々もいたが、大部分は日本の、世界に貢献するという態度に好意的である。
『今回の事態を受け、日本の特に軍事面について、どう移り変わっていくのでしょうか』
NHKのアナウンサーがスタジオの軍事ジャーナリストに聞く。
『そうですね、今回については自衛隊の火力不足が目立ちましたが、勝利出来ましたからねぇ。現状維持、という方向でまとまってしまうのではないでしょうか』
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