第7話

 ガラスの破片が散らばる展望台の床に、藍が胸を押さえ、手をつく。

「大丈夫!?」

 佳奈が心配して駆け寄る。

「ごめん、ちょっと無理しすぎたかも……」

「もう、先を見ず突っ走るバカなんだから……」

 佳奈はノートパソコンを放り出し、藍を正面からぎゅっ、と抱きしめる。

「でもね、もうちょっと頑張って欲しいな。世界を救うために」

「……出来るかな?」

 小さな声で、藍は佳奈に聞く。

「出来るわよ、アイなら」

「何でもしてくれる?」

「いいわよ、世界が救えるんなら」

「じゃあ、そのけ──」

「アイ、ほら」

 ゆかりはどこからか三毛猫を取り出し、首根っこを掴んで藍に示す。にゃあ、と猫は一声鳴く。

「かわいぃぃぃぃぃ!」

 藍は佳奈を突き飛ばし、一目散に猫に駆け寄る。ゆかりから猫を受け取ると、

「ネコ助、一緒に戦ってくれるよね!」

 猫に語りかける。猫はまた、にゃあ、と返事。それを承諾の返事と取り、何を思ったか


「あい、きゃん、ふらーーい!」


 猫を抱えて、攻撃で空いた穴から飛び出した。

「ちょっとアイ!?」

 佳奈は止めようと手を伸ばすが、届かない。そして藍は、一直線に飛翔体の方へ、文字通り飛んで行った。

「……まったくもう、どうなってるのよこの世界は」

「これが彼女の実力よ」

 ゆかりが佳奈に語る。

「知ってか知らずか、彼女は隠された能力を発揮した。それだけのことよ」

「隠された、能力?」

「そう。それより、カナはアイが何を言いかけたか、解ってる?」

「え、知ってるの?」

「解るわ。それはね、」

 ぼそぼそ、とゆかりは佳奈に耳打ちする。それを聞き、佳奈はぼっ、と顔を赤らめる。

「な、アイは何考えてるのよ!」

「バカだから仕方ないんじゃない?」

 佳奈はノートパソコンを拾い、胸元に抱え込む。

「まったく、戻ってきたら覚えてなさいよ……」

「まんざらでもない感じだけど?」

「うっ」

 藍は福岡タワーを飛び出すと、一直線に飛翔体の方へ向かう。再びナタデココグミを口に入れ、


「ナタデココ、キーーーーック!」


 勢いよく、左足で飛翔体を攻撃した。攻撃を受けた飛翔体はバランスを崩し、操縦不能な状態のまま後ろの機体へとぶつかり、爆発炎上。ぶつかられた機体もまた、後ろの機体へとぶつかり、玉突き状態で五機ほどが犠牲となった。

「やった、あと七機で──」

 身体から突然力が抜け、藍もまた、海面へと落ちて行く。

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