さいきんの鬼と福のはなし2
あるとき、男は考えました。
「鬼がいなくなったら、ほんとうに平和はくるのだろうか」
しかし、それは口に出してはいけないことのように思えたので、だまっていました。
同じことを考えている人は、ほかにもいました。
でもそれを口にするのは、みんなおかねもちで、男はなんとなく彼らを応援する気にはなりませんでした。
おかねもちは、王さまにいいました。
「罪の無い鬼を追い出して、何が平和だ」
「だまれ、下賤の者」
王さまは、さっと顔を挙げて報いました。
「おまえらは、うそつきだ。おまえらの話は、きかないことにする」
王さまは、さけびました。
「おにはーそと!」
王さまは、文句をいってくる人たちに対しても豆をぶつけるようになりました。
男は、前の王さまは自分たちの話をよく聞いてくれたなあ、と思いました。
しかし、それは口に出してはいけないことのように思えたので、だまっていました。
「おにはーそと!」
必死に働きながら、たまに鬼がでてくると、男は豆をまきました。
国はそこそこ平和で、給料もちゃんともらえます。
男は暮らしに満足しているし、王さまのことがすきです。
たまにおかねもちが文句をいうこともありますが、男には彼らがいうことがよくわかりません。
王さまは彼らを鬼だといいますが、昔は鬼ではなかったのに、途中から鬼になることなどあるのか、男にはよくわかりません。
でも、男はそれについて、何もいいませんでした。
えらい王さまが鬼だというのなら、それはそれでいい気がしました。
さいきんばなし、おわり?
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