さいきんの鬼と福のはなし1

さいきんさいきん、ある国に貧しい男が住んでいました。

男は毎日必死にはたらきましたが、得られるお金はなんとか飢えをしのげるほどでした。


ある日男がいつも通り仕事を終え、帰ろうとすると、仲間たちとともに工場長に呼び出され、

「おまえたちに払う金がない、すまないがもう明日から来ないでくれ」

と言われました。


次の日も、その次の日も、仕事を探しに他の工場を回りましたが、どこも男を雇ってはくれません。それどころか、どこの工場も従業員をクビにしているではありませんか。


クビになった男たちは考えました。

「どうしてこの国には仕事がないんだろう?」

「鬼が仕事を奪っているにちがいない」

(以下略)


この国の王さまは優しく、貧しい人々の話をよく聞きましたが、決して豆をなげることはしませんでした。

王さまは鬼たちにも人気があったので、厳しいことはできなかったのです。


男は激怒した。

「呆れた王だ。生かして置けぬ」


そんなことを考えていると、王さまが王さまをやめるといううわさが男の耳に入ってきました。王さまが王さまをやめたら何になるのか、よくわかりませんでしたが、男はよろこびました。


男は考えました。

「次の王さまは鬼に豆をぶつけてくれる、つよい人がいいなあ」

この国の、多くの人々が同じことを考えていました。


そんなとき、

「おにはーそと!」

と声が聞こえてきました。

声のする方をみると、見知らぬ大男が、豆をまいていました。大男はいいました。

「わたしが、あたらしい、王さまだ」

人々は、強そうな大男が王さまになったと知って、よろこびました。


「おにはーそと!」

王さまがさけぶと、鬼たちは、国からでていきました。

人々は、よろこびました。


「ふくはーうち!」

また王さまがさけぶと、たくさんの工場がたちました。

人々は、またよろこびました。


「おにはーそと!」

またまた王さまがさけぶと、国の周りに大きな壁ができ、鬼たちは入ってこれなくなりました。

人々は、またまたよろこびました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る