むかしの鬼と福のはなし2

男は、毎日必死にはたらき、そして鬼に豆をなげました。

しばらくのあいだは幸せに暮らしていましたが、いつからかまた生活がきびしくなってきました。


王さまは言いました。

「われわれは、国の外にいる鬼とも、たたかわなければならない」


「よくわからないけれど鬼がいるのは困ることだなあ」

と思いながら、男は話をきいていました。

工場の仲間たちはみんな、国外に鬼退治へでかけていきました。

男は国を出たことがないのでわかりませんでしたが、たぶん鬼ヶ島にいったのだろうと、なんとなく思いました。


しばらくすると、生活はもっときびしくなってきました。

これまで豆をまいていなかった人も、豆をまくようになりました。

豆をまかない人は鬼と呼ばれ、豆をぶつけられるようになりました。


それを見て男は考えました。

「この人たちはむかし仲間だったのに、なぜいまは鬼と呼ばれるのだろう?」

しかし、それは口に出してはいけないことのように思えたので、だまっていました。

そして、よくわからないけれど、みんなと一緒に新しい鬼たちにも豆をまき続けました。

「おにはーそと!ふくはーうち!」


またしばらくすると、知らない国の軍服をきた人たちが国に入ってきました。

男は考えました。

「こいつらは、鬼だろうか?」

豆をぶつけるべきか迷っていると、軍服をきた人たちのうちの1人がいいました。

「鬼退治に、成功したぞ」

どうやら、軍服をきた人たちは、王さまのことを鬼と呼んでいるようでした。


男は考えました。

「王さまは、鬼だったのだろうか」

しかし、それは口に出してはいけないことのように思えたので、だまっていました。

そしてよくわからないけれど、それ以来、男は王さまのことを鬼と呼び、王さまの話をする人たちに豆をぶつけるようになりましたとさ。


むかしばなし、おわり。

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