第333話歎異抄 なごりをしく おもへども

(原文)

なごりをしく おもへども、娑婆の縁尽きて、ちからなくしてをはるときに、かの 土へはまゐるべきなり。

いそぎまゐりたきこころなきものを、こと にあはれみたまふなり。

これにつけてこそ、いよいよ大悲大願はた のもしく、往生は決定と存じ候へ。

踊躍歓喜のこころもあり、いそ ぎ浄土へもまゐりたく候はんには、煩悩のなきやらんと、あやしく 候ひなましと云々。

(意訳)

この世を名残惜しく思っていても、縁というものが尽き、何ともしようがなく生涯を終える時に、浄土に參ることになるのです。

急いで浄土に行きたくないような人を、阿弥陀仏は特に憐れんでくださいます。

それを理解すれば、ますます阿弥陀仏の御慈悲と御誓願は確かなものであって、私たちの往生も確定されていると、思ってください。

天にまで躍り上がり、地から跳び上がるような喜びを持って、浄土に急いで行きたいという人は、本当は煩悩の苦しみがないのではないか、と不審がられるのではないでしょうか。


確かに、阿弥陀仏の救いは、悩み苦しむ人の救いのため。


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