第332話歎異抄 久遠劫よりいままで流転せる苦悩 の旧里はすてがたく

(原文)

久遠劫よりいままで流転せる苦悩 の旧里はすてがたく、いまだ生れざる安養の浄土はこひしからず候 ふこと、まことによくよく煩悩の興盛に候ふにこそ。

(意訳)

人間というものは、はるかはかりしれない過去より、輪廻の世界を巡ってきましたので、その苦悩のふる里のほうが懐かしく感じてしまいますし、まだ生まれ変わったことのない安らかな浄土は、ほとんど恋しいとは思わないのです。

そういうことだから、本当に私たちを支配して離れることのない煩悩は、本当に激しさく強いと言うことができるのです。


苦しみから逃れたいけれど、生まれ変わったことのない浄土や仏の世界はよくわからないし、なかなか恋しいとまでは思わない。

しかし、結局それでまた、悩み苦しみ続ける。

その決断が出来ない人間、不安や疑念に満ちた人間がほとんどだと思う。

逆に何も悩まなければ、疑わなければ、その人に煩悩はない。

そういう仏のような人は、特に阿弥陀仏の救いは、優先順位は低い。


阿弥陀仏の救いの優先順位が高い人は、煩悩に苦しみ喘いでいる人になる。

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