第23話 40年目の真実

「待って叔父さん!母から全て聞いたの。


叔父さんが此処に来る事を・・・」


「お母さんの予言ですか、慰めはいいよ。


僕は最愛の恋人を弟に取られた、


駄目な人間なんです」


「違うの叔父さん!母が手紙を送ったのは


全部知ってたから」


俯いていた広隆が、徐々に顔をあげて。


「そうだったのか、八重子が僕を守ろうと。


僕に起きた出来事全てが、


彼女の予言小説に・・・」


また本を持ち上げ、ジッと見詰める。


八重子は、僕の未来を知ってたんだ。


「母が描いた本を信じて!


母が遺した予言小説を信じてやってください!


必ず叔父さんは元の世界に戻れます、


だから、死ぬなんて言わないで!」


千春が座ったまま、深く頭を下げた。


それを見届けたかのように、ぬっくりと


立ち上がった広隆が、部屋の窓辺に立つ。


すると、傍に千春が来てそっと寄り添う。


40階から観る東京の夜景は、星空のように


まばゆい程の輝きを放っている。


「なんという、美しさだ」


夜景に、浩二と八重子夫婦の幻夢が。



明日、八重子と浩二のお墓に行かなくちゃ。


行かなくちゃ・・・


それから・・・


それから・・・


それから・・・



そして、僕は途方に暮れる。



(終)



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予言小説の女 @sabakutani3546

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